売上高1兆円を超える日本ハム、財務責任者が明かす筆頭課題
日本ハムは食肉・加工事業で国内首位。売上高も国内同業の中では唯一、1兆円の大台を超える。ただ、食肉の相場変動の影響や加工事業の固定費負担の大きさなどから収益性が低く、財務責任者の片岡雅史取締役執行役員は「固定資産の回転率を上げることが筆頭の課題」とする。2030年3月期に投下資本利益率(ROIC)8・0%以上(21年3月期は5・9%)を重点指標に掲げ、収益力向上に取り組む。
加工事業を中心に、新規投資だけでなく設備の老朽化対策へも積極投資しており、21年3月期の有形固定資産は18年同期比約565億円増の約3256億円まで増加した。さらに、食肉の原料や配送コストなどが上昇して採算が悪化。コロナ禍の逆風も加わり「売上高が伸び悩む中で固定資産増加の負担が増している」(片岡取締役執行役員)と警戒する。実際、競合する伊藤ハム米久ホールディングスのROICは21年3月期で6・3%と日本ハムを上回る。
もちろん外部環境が好転し売上高が伸びると一定のROICの改善は見込まれる。ただ22年3月期から3カ年の現中期計画の中で、食肉事業の合理化やデジタル変革(DX)によるオペレーション強化などで約2480億円の大型投資を計画しているだけに、固定資産が増える中での稼ぐ力が求められる。
そこでROICの構成要素を細かく分析し、事業本部ごとに固定資産回転率や棚卸回転率などのKPIを定めた。事業部ごとの数値目標を明確化し「事業の入れ替えや注力事業へのシフトを進める」(同)ことで筋肉質な体質に改善していく。野村証券エクイティ・リサーチ部の藤原悟史氏は「DXによるコスト削減、不採算商品の削減、工場閉鎖による固定資産の回転率向上などで(ROIC8・0%目標は)達成できるだろう」と見る。
フリーキャッシュフローについては、積極投資を背景に「単年度では赤字の可能性はある」(片岡取締役執行役員)。ただ現中計の3年間では250億円の黒字を確保する計画。さらに25年3月期からスタートする次期3カ年計画では、設備投資がピークアウトするため1610億円の黒字を見込む。