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自動車メーカー・商社…ウクライナ侵攻で顕在化する日系企業の売り上げ減

ウクライナへの軍事侵攻により、ロシアに進出する日系企業の売り上げが減少していることが明らかになった。日本貿易振興機構(ジェトロ)が31日に発表した調査結果によると、2月24日を起点に前後1カ月間の売り上げが「減少した、またはゼロ」と答えた企業は全体の64%だった。ロシアには自動車メーカーや商社をはじめ多くの日系企業が進出する。ロシア離れが進み、先行きの不透明感も増している。(森下晃行、名古屋・政年佐貴惠、江上佑美子、日下宗大)

ジェトロはロシアに所在する日系企業211社を対象に、3月24日から28日にかけてアンケートを実施した。回答企業97社のうち、制裁やロシア政府の対抗措置により「すでに悪影響がある・悪影響が予想される」と回答した企業は99%にのぼった。具体的には物流の混乱・停滞、ルーブル為替レートの下落、金融決済の困難などがあがり、対ロ事業継続によるレピュテーションリスク(企業の評判が落ちるリスク)を危惧する声もあった。

今後半年から1年後の事業見通しについては「縮小」が38%、「わからない」が29%、「現状維持」が25%、「撤退」が6%だった。約1カ月前に実施した調査と比べ、縮小と答えた企業は21ポイント増加した。ジェトロ海外調査部の下社学主幹は会見で「各国の経済制裁によりロシア市場が縮小しており、日本企業が前向きに評価可能になるまでかなり時間がかかりそうだ」と説明した。

日系自動車メーカーでは、トヨタ自動車がサンクトペテルブルク工場の稼働や車両の輸入を停止。ロシアへの金融制裁や物流の停滞などにより、部品を調達できないことが理由だ。稼働再開時期は「サプライチェーンの復旧のめどが立たず、先行きは見えない」(トヨタ幹部)という。

日産自動車はロシア国内での工場稼働や完成車の輸出を停止しており、再開時期は未定。三菱自動車もカルーガ州の工場での生産を停止する見込み。マツダはウラジオストクの工場向け部品輸出を止めており、ロシアでトラックのノックダウン生産をしていたいすゞ自動車は現在、工場の稼働を停止している。

ロシアでエネルギー開発を手がける総合商社も厳しい状況に立たされている。日本はロシアから液化天然ガス(LNG)の約1割を輸入している。三井物産は三菱商事などと原油・LNG生産の「サハリン2」に参画し、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とLNG生産の「アークティック2」も開発中だ。両事業について「引き続き関係者と協議を続けている」(三井物産)状況。欧米企業が撤退を相次ぎ表明する中、事業を継続するのかどうか難しい判断を迫られそうだ。

日刊工業新聞2022年4月1日

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