欧米の「脱ロシア」加速、原油など禁輸で日本はどうなる
バイデン米大統領が8日、ロシアから原油や天然ガスなどの輸入を禁止すると発表した。英国も年末までにロシアからの原油輸入を停止すると表明したほか、欧州連合(EU)は天然ガスのロシア依存度を引き下げる計画を公表。欧米で「脱ロシア」の動きが鮮明となり、国際需給の逼迫(ひっぱく)に伴うエネルギー高は長期化しそうだ。市場では、高インフレと景気悪化が同時進行する「スタグフレーション」への警戒も高まっている。
バイデン米大統領が8日、ロシア産原油などの禁輸措置に関する大統領令に署名し即日発行したほか、ジョンソン英首相はロシアからの石油輸入を段階的に減らして年末までに停止すると表明した。EUも同日、ロシア産天然ガスの依存度を年内に約3分の2減らし、2030年よりも前に依存から脱却する計画を公表した。
EUはロシアへのエネルギー依存が高いため足並みはそろわなかったが、欧米はウクライナへ侵攻するロシアへの経済的打撃を与える姿勢を強めている。ロシアの原油輸出先に占める米国比率は2%程度と低いものの、ロシア離れの動きは民間でも加速し、英石油大手シェルは8日、ロシア事業からの完全撤退を表明した。
楽天証券の吉田哲コモディティアナリストは「米国の禁輸の直接の影響は小さいが、民間のロシア離れも重なって原油需給の逼迫が意識され、原油相場は当面高止まりするか一段と上昇する」とみる。
足元では、米国産標準油種(WTI)先物が1バレル=125ドル近辺と約14年ぶりの高値圏にあるほか、欧州ガス価格の指標のオランダTTF先物は1メガワット時=210ユーロ近辺と年初比約2・6倍高い。金融市場では、長引くエネルギー高に伴う企業収益の圧迫など「スタグフレーションへの警戒が根強く、株価の上値が重い」(野村証券投資情報部の沢田麻希ストラテジスト)との声がある。
日本は目先の原燃料価格の高騰への対応に加え、原油の中東依存度が約9割と高い中でロシアを含む調達先の多様化をどう進めるのか、中長期の難題にも直面している。直近の政府対応は「気候変動対策が大きな眼目だったが、(ウクライナ危機を受けて)エネルギーの安定供給と価格安定化が再び求められたのは間違いなく、水素技術や原子力などを含めもう一度しっかりとした議論が必要だ」(日本エネルギー経済研究所の小山堅専務理事・首席研究員)との指摘もあり、日本のエネルギー政策は大きな岐路に立たされている。