「プラズマ乳酸菌」は新型コロナに有効性を発揮できるか
新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大して約2年が経過するが、未だ収束せず猛威を振るっている。各国でワクチンや治療薬の開発が進んでいるが、新型コロナは変異が早く有効性が低下する可能性がある。キリンホールディングス(HD)は体内の自然免疫を高める「プラズマ乳酸菌」を使った感染症への新たなアプローチを考案している。同社が発見した乳酸菌が、新型コロナに有効性を発揮できるだろうか。
免疫はヒトの体に侵入して悪影響を及ぼす病原体などを認識し、防衛する能力。一度体内に入ってきた敵を覚えて2回目以降の侵入時に攻撃する「獲得免疫」と、外からの初めての敵にもすぐに攻撃する「自然免疫」の2種類がある。新型コロナのワクチンは獲得免疫に当たるが、ワクチン2回接種の効果が6カ月で10分の1に低下し、変異株のオミクロン株での発症予防効果の減少が見られている。日本医科大学の北村義浩特任教授は「新型コロナのワクチンは毎年接種する必要がある。変異しやすさを考慮するとワクチン以外の感染症へのアプローチが必要」と強調する。
そこでキリンHDは長年研究を進めてきた自然免疫に着目し、新型コロナへの新たな対策を検討している。同社は自然免疫の研究を進める中で同免疫の効果を高める「プラズマ乳酸菌」を発見し、飲料水やサプリメントを開発・販売してきた。現在プラズマ乳酸菌が新型コロナに有効かを調べており、効果があれば創薬などへの応用も視野に入れている。
これまでに国立感染症研究所と共同研究で、細胞実験レベルでプラズマ乳酸菌が新型コロナの増殖を低下させることを明らかにした。同社ヘルスサイエンス事業部の藤原大介部長は「自然免疫の研究はパンデミック(世界的大流行)に備えた研究でもあった。今後の成果が良ければ新型コロナに応用したい」と意気込む。
この結果を受けて、長崎大学と共同でプラズマ乳酸菌が新型コロナ患者に有効であるか調べる臨床試験を始めた。20歳以上65歳未満で肺炎の症状が見られない軽症患者を対象に、プラズマ乳酸菌が入った錠剤を投与してウイルス量や抗体量などを経過観察する。3月中にも目標の試験人数を達成する見込みで、2022年末にも成果を発表する予定。臨床試験を主導する長崎大学の山本和子講師は「新型コロナの治療薬はあるが、供給が限られ副作用が見られるなどの課題がある。効果が見られれば軽症患者向けの治療につながる」と期待する。