NEC系リース会社が重視する二つの財務指標
NECキャピタルソリューションは主に、筆頭株主のNECの顧客である官公庁や大企業に情報通信機器をリースしている。ただリース市場は拡大が見込めず成長余力が限られると見て、2011年に投資子会社のリサ・パートナーズ(東京都港区)を完全子会社化した。リースとリサのインベストメントの両事業でバランスを取るため、二つの財務指標を重視する。
一つ目がリース事業の売上総利益だ。売上高から売上原価を引いた粗利で、成長の目安としている。17年3月期の新セグメント後は、18年3月期の120億円を底に回復し、21年3月期は142億円だった。情報通信機器はデジタル変革(DX)需要を取り込んで堅調だ。リース事業はストックビジネスだが、渡辺登執行役員は「ボリュームを大きくすることは考えておらず、収益率を高めることで伸ばす」と今後の方針を説く。
一方、二つ目の指標である全社の総資産利益率(ROA)は低下した。リースは営業資産が変動するため、NECキャピタルのROAは期初と期末の営業資産残高を足して2で割った数値を分母に、経常利益を分子に算出する。
18年3月期の1・7%から、コロナ禍の設備投資抑制で21年3月期は0・7%にまで悪化。売上高が近く、共に情報通信機器が主力のリコーリースの18年3月期1・2%から21年3月期1・04%と比べても低下幅が大きい。リース事業が収益を上げづらい官公庁比率が高いことが響く。
インベストメント事業は21年3月期までの5年間で平均0・35%寄与し、大和証券の矢野貴裕アナリストは「二つ目の柱があるのは良い」と評価するものの、今後のリース事業については「官公庁向けが多く、持続的に成長できるかが課題」と指摘する。
NECキャピタルはROAを22年3月期は1・0%と予想。23年3月期は1・3%を目標に掲げる。売上総利益の上昇とROA改善ともにリース事業の収益性向上が不可欠だ。渡辺執行役員は「リースにサービスを加えるなど収益性を高める」としているが、関連のITサービス提案など付加価値をどこまで出せるか問われる。