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レジャー・農業の現場に広がるか、ヤマハ発「自動運転の電動ランドカー」の実力

レジャー・農業の現場に広がるか、ヤマハ発「自動運転の電動ランドカー」の実力

自動運転の電動ランドカー

ヤマハ発動機は自動運転の電動ランドカーの用途開拓に取り組んでいる。釜石鉱山(岩手県釜石市)では、ビジネス視察で訪れる人や社会科見学の生徒らの移動手段として、トロッコ列車に代わって採用された。ヤマハ発は環境性と静音性を兼ね備える電動ランドカーの特徴を訴求し、レジャー施設や公共施設、農業の現場などでの移動や搬送で用途拡大を目指す。

ヤマハ発の電動ランドカーは、電磁誘導技術で、あらかじめ設定したルートを自動走行する。車間を保つ制御技術も確立しており、複数台での走行も可能。釜石鉱山では5台で最大22人の乗客をゆっくりと一定の間隔を保ちながら輸送する。

釜石鉱山は1993年に大規模な採掘は終わったが、地下水力発電の設備などがあり、見学会を実施している。バッテリー式のトロッコ列車を走らせていたが、補修部品の入手や専門技術者の確保が難しくなった。このため代替手段として電動ランドカーの導入の相談をヤマハ発に持ちかけた。

坑道はアリの巣のように伸び、むき出しの岩盤がカーブをふさぐような場所もある。一年を通じて湿度90%、気温10度Cで走行路には水が川のように流れる厳しい環境だ。

ヤマハ発子会社で電動ランドカーを手がけるヤマハモーターパワープロダクツ(静岡県掛川市)の担当者が初めて坑道を見た時は難しいと感じたほどだった。しかし電動ランドカーの車体や制御システムの調整に加え、坑道の環境整備も実施して課題を解決し、20年に走行を始めた。

釜石鉱山の担当者は「トロッコは同行者と会話できないほど騒音が出たし、大きな振動もあった。(静音性がある)ランドカーで快適性が上がった」と評価する。

電動ランドカーはさまざまなフィールドで社会課題の解決を図るソリューションモビリティーになり得る。今後もヤマハ発は、広く活躍の場を探っていく方針だ。

日刊工業新聞2022年2月23日

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