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一つの素材で作るファスナーに挑むYKK、社長が語った課題

一つの素材で作るファスナーに挑むYKK、社長が語った課題

現行のYKKのファスナー。一部に植物由来ポリエステルを使い、化石燃料の使用量を減らした環境配慮型製品

YKKは一つの素材でつくるファスナーの開発に乗り出した。ファスナーは通常、手でつかむ引手の部分や衣服に縫い合わせる布の部分(テープ)、かみ合わさって閉まる部分(エレメント)など、機能ごとに金属や樹脂、繊維など異素材が使われている。一つの素材でつくることで、リサイクル時の分別の手間を省き、循環型社会の構築に貢献できる。

YKKの顧客となる世界のファッションブランドに代表される服飾業界では、古着の衣類をもう一度、繊維状に戻して再生する「ガーメントリサイクル」が流行しつつある。ファスナーは現状、金属なども使われるため、リサイクルする際にファスナーだけ衣類から切り離す手間が生じている。「(衣類の生地と)同じ素材で作れば、ファスナーごとリサイクルできる」(大谷裕明社長)とみて、開発を急ぐ。

課題は、ポリエステルやナイロンなど衣類に使われる樹脂とすべて同じ素材でつくった場合、繰り返されるファスナーの開閉に耐える「強度をいかに保つか」(同)という。大学など外部機関とも連携しながら課題解決を目指す。

大谷社長は製品化の時期を明らかにしていないが、世界のファスナーメーカーと環境配慮型製品の開発競争が激しくなる中、早期の実用化を狙う。

服飾業界では大量生産・大量消費による大量廃棄「ファッションロス」が社会問題になっている。環境省によると、日本で廃棄される服の量は年間約48万トンで、平均1日当たり大型トラック約130台分の服が焼却・埋め立て処分されている。対策として、古着をフリーマーケットで販売したり、リメークして再販売したりする動きがある中、ガーメントリサイクルに取り組むアパレルメーカーも増えつつある。YKKはこうしたユーザー側の動きを捉え、迅速に対応していくことで、受注拡大につなげる。

日刊工業新聞2022年2月22日

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