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レジ袋有料化で工夫を凝らす小売り業界、素材はプラスチックから何に変わる?

レジ袋有料化で工夫を凝らす小売り業界、素材はプラスチックから何に変わる?

ユニクロは紙製ショッピングバッグへの切り替えを進めてきた(ユニクロ銀座店)

「脱プラスチック」が社会生活に浸透してきた。海洋環境や生態系に大きな影響を与える海洋プラスチックゴミ問題などを受け、企業は環境経営としてプラスチックの削減やリサイクルに取り組む。政府もコンビニエンスストアなどで配られるプラスチック製レジ袋の7月からの有料化を決めた。今後も日常生活で手にしていた使い捨てプラスチックが他の環境特性の高い素材に次々と変わっていく。

SDGs推進、袋の2次利用普及

マルエツは3月末に全店でレジ袋の無料配布を止める。4月1日から大サイズは1枚3円、弁当用は2円で販売する。住友商事子会社のトモズ(東京都文京区)は4月にドラッグストア「トモズ」各店でレジ袋を有料化。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する取り組みの一つとして行う。プラスチックのほか、森林資源保全の観点から紙の袋も有料化する。ファーストリテイリング傘下のユニクロとジーユーも紙製ショッピングバッグへの切り替えを進めており、さらに4月から同バッグを1枚10円で提供する。

レジ袋の有料化は、生鮮食品を入れる薄手のロール袋のほか、植物由来などの素材で環境負荷が小さいものは対象外となる。そのため、環境特性の高いレジ袋の需要も今後高まると見られる。

白石バイオマス(京都府京丹後市)は、抗菌・消臭機能を持ち、植物由来のバイオマス材料を30%配合したプラスチック製レジ袋「ネオプラUバッグ」を開発、小売業向けに提案を始めた。材料にでんぷんを20%、米ぬかを10%配合しており、レジ袋有料化の対象外となる。年間100トンの販売を目指す。

同製品は、米ぬかが持つ抗菌・消臭機能を保持したまま、レジ袋に求められる強度を付与。500ミリリットル入りペットボトルを6本入れた場合も破れず、持ち運べる。食品衛生法の溶出試験に適合しており、食品などをそのまま入れられる。共同開発した丸真化学工業が持つ、袋原反の加工工程や添加剤などの技術で、機能を保持したまま強度を持たせることに成功した。

買い物袋として使った後は、抗菌の機能を生かした食品保存や、消臭機能を生かしたおむつ廃棄、生ゴミ処理などの二次利用ができる。荻野晴彦社長は「生分解性樹脂より安価に製造できる。有料化を機に一般消費者にも袋の二次利用を普及させたい」としている。

優れた素材採用

海洋プラゴミ問題を背景にリサイクル性に優れた素材が採用される動きも強まる。王子ホールディングス(HD)の紙製品が、ネスレ日本(神戸市中央区)のチョコレート菓子「キットカット」製品のパッケージ素材に採用された。日本製紙は、紙製バリアー素材「シールドプラス」が、菓子の包装資材を企画・製造・販売する福重(大阪市中央区)の規格袋として選ばれた。木質素材100%の基材に製紙用水系塗工技術を活用したバリアー塗工層を加えて開発。従来はプラスチックの領域だった紙に酸素や香りをバリアーする機能を持たせている。

大王製紙は、ショッピングバッグ向けにプラスチック系素材からの代替可能な包装用原紙として、古紙を配合した包装材を発売した。国際的な森林管理認証「FSC認証」を取得している。

包装資材を手がけるショーエイコーポレーションは22年をめどに非プラスチックの資材比率を3割まで引き上げる。従来はパッケージ事業を中心に、ほぼプラスチックフィルム製の包装資材を手がけてきた。社会の環境意識の高まりを受け、同社は「“なんでもプラスチック”という考え方は捨てないといけない」とし、非プラ資材の拡充に踏み出した。

紙や木、布などによる包装資材のラインアップを増やす。包装資材の販売を直販体制に変更することで、非プラ資材やエコ製品の提案を顧客に直接でき、受注増につながると見る。非プラ資材はプラ材資材と比べて生産コストがかかる短所がある。そこで紙など非プラ材料の包装材メーカーとの業務提携やM&A(合併・買収)も検討。内製化でコストを抑えることも狙う。

大王製紙の「FS未晒再生紙100」を使用した手提げ袋

アルミニウム業界でも脱プラの取り組みが加速している。UACJは社内に脱プラスチック・アルミ化推進プロジェクトを立ち上げた。現状分析や海外のプラスチック規制に対する企業や団体などの取り組みの分析に乗り出している。石原美幸社長は「海外では世界的な脱プラスチック問題の動きから、リサイクル性に優れたアルミ缶への回帰がはっきり出てきている。特に北米や東南アジアで期待が持てる状況だ」という。リサイクル性に優れたアルミの特性を企業や団体と情報共有し、従業員をはじめ一般消費者らへの啓発活動を積極化する。

UACJはアルミ化の推進で地球環境に貢献する(同社提供)

飲用後可燃ゴミで処理

YKKは海洋プラゴミを主材料とした樹脂製のファスナーを開発し、20年中に販売を始める。スリランカの海岸線から50キロメートル以内で収集されたプラ廃棄物を主材料に用いる。

同ファスナー「NATULON Ocean Sourced(ナチュロン オーシャン ソースト)」は、従来の樹脂ファスナーと同等の強度や耐久性、機能性を持つ。陸から海へゴミを流入させずに、製品へアップサイクリングさせることによって、環境問題の解決に貢献したい考えだ。YKKは、植物由来のポリエステル樹脂を主材料としたファスナーやオーガニックコットンを使用したファスナー、染色工程で水をほとんど使わない染色技術などサステナビリティーに配慮した商品開発を進めている。

脱プラの意識の高まりでペットボトルを使用禁止にする企業・団体が増えている。これに対応する“会議用飲料”が登場した。ポッカサッポロフード&ビバレッジ(名古屋市中区)が商品化した紙製容器の飲料「旨みまろやか緑茶」と「ほのかに香るレモン水」だ。会議・来客向け用途に配慮したパッケージ設計にしているのが特徴。

紙製飲料容器「カートカン」を使用。容量は195グラムの飲みきりサイズで、緑茶とレモン水それぞれ6種類のデザインを採用し、会議などで誰のドリンクかを認識しやすくした。デザインにメーカー色が出過ぎないようにも配慮している。カートカンは凸版印刷が96年に国内で導入した容器で、原料の紙に間伐材を含む国産材を30%以上使用する。飲用後は可燃ゴミとして処理できるほか、容器を展開してリサイクル回収することも可能だ。

紙製容器を採用した会議用飲料「旨みまろやか緑茶」
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