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定年制を廃止したYKK、人事部長が明かす決断への思い

YKKは4月、国内事業会社で定年制を廃止した。少子高齢化で現役世代の人口が減少する中、今後も会社が発展を遂げるには「全ての社員にこれまで以上に年齢に関わらず活躍してもらいたい」(寺田創執行役員人事部長)との思いが背景にある。高齢の社員が残留しても、若い世代が萎縮せず活気のある組織を維持できるか試される。

グローバル展開しているYKKは海外事業会社が89社あり、海外では既に社員の処遇に年齢を基準としない国がある中、「国内事業会社でも年齢に言及すべきでないとかねて考えていた」(同)という。また経営理念に「公正」を掲げており、年齢を基準とした一律退職である「定年制度」や、再雇用で給料が下がるような処遇は「公正ではない」(同)と感じていた。こうした思いも、定年廃止を後押しした。

同社は元々、成果・実力主義を掲げ、「役割」を軸とした人事制度を導入してきた。ベテランも若手も適材適所で配置し、役割に応じて公正に処遇するよう努めてきた。高齢の社員も、従来と同じ職務内容・役割であれば、処遇はこれまでと同水準となる見込みだ。

社員は65歳までに面談などを行いながら、自ら65歳以降の働き方を決められる。職務は64歳までの経験やスキルを考慮して決まる。実は、まだ65歳に達した社員はおらず、本格的に定年廃止の影響が出てくるのは24年4月以降という。「それまでに人事制度の詳細を詰めたい」(同)としている。

過去数年間、社内で定年廃止を議論した際、ベテランからはまだまだ働けると期待の声が挙がる半面、若手からは将来、自分たちに管理職のポストが回ってこないのではと不安の声があったという。こうした声に対応し、「管理職が適切なタイミングで後進に道を譲る制度を導入していく」(同)。また年齢に関わらず果敢に挑戦する社員を公正に評価・処遇し、組織の活性化を図る方針だ。

日刊工業新聞2021年11月30日

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