ニュースイッチ

EV航続距離の伸長を後押し、ダイヘンが開発した「溶接ロボット」のスゴい実力

EV航続距離の伸長を後押し、ダイヘンが開発した「溶接ロボット」のスゴい実力

新しい溶接システムを搭載したロボット3台で同時溶接するデモ(ダイヘンの六甲事業所)

ダイヘンは電気自動車(EV)の生産現場に最適な溶接システム「シンクロフィード・エボリューション」を開発した。EVの軽量化で採用が進む超高張力鋼板(超ハイテン)やアルミニウムの溶接を、独自の制御技術によりスパッタ(飛散する金属粒)発生を最大99%削減した高品質の溶接が行える。可搬重量6キログラムの産業用ロボットに搭載し発売した。EVメーカーを中心に、国内外で年間1500台の販売を目指す。

重量があるバッテリーを搭載したEVの航続距離を伸ばすには、車体軽量化が不可欠となる。足回り部材には強度があり薄くできる超ハイテン、バッテリーケースにはアルミを使うなど、鉄系からの材料シフトが加速する。一方で異質材料により、溶接時にスパッタが多く発生し、軽金属素材の適用による溶け落ちや、新構造でワーク(加工対象物)精度のバラつきがあり、溶接品質の安定・向上は課題だった。

ダイヘンは2015年に溶接の品質向上につながるスパッタ発生を抑える溶接システムを開発。今回は同システムを大幅改良し、従来比1・6倍の早さでワイヤの正送・逆送を繰り返す送給制御技術と、独自の電流波形制御技術を組み合わせ、適用材料を拡大した。短いアーク長で母材などが溶けてできる溶融池を押し広げて、幅広く平らなビード(溶接痕)形成ができる。

放電現象のアーク発生タイミングを予測する学習機能を搭載し、複数台の同時溶接でのスパッタ抑制も実現した。独自の入熱・溶け込み制御でワークの板厚は1ミリ―8ミリメートルに対応。パルス周波数の調整機構で外観に優れたうろこ状ビードを形成できる。ロボット溶接システムの消費税抜きの価格は850万円。

世界でEVが普及する中、「軽量化でアルミやハイテンなど難しい接合の需要がかなり出ている」(ダイヘンの金子健太郎常務執行役員FAロボット事業部長)という。

日刊工業新聞2022年2月21日

編集部のおすすめ