共同船舶が建造へ、SDGs意識した新型「捕鯨母船」の全容
共同船舶(東京都中央区、所英樹社長)は、新たに建造する捕鯨母船で鯨肉の品質向上と環境配慮の両立を目指す。保冷設備ではリーファーコンテナを導入し、コンテナごとに温度帯を変えて保管できるようにする。環境面では電気推進船とすることで、燃料の過剰使用をなくすなど、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の観点も意識しながら対応する。(浅海宏規)
新捕鯨母船は全長が約112・6メートル、総トン数が約8970トンの電気推進船で、70トンのクジラを引き上げる能力と、船体のコンパクト化を両立したものとする。2月中に旭洋造船(山口県下関市)と本契約を結び、23年6月の起工、同年9月に進水させる予定。24年3月の完成を目指す。
保冷設備では冷艙(船内で凍結させた製品を陸揚げまで冷凍保管しておくための冷凍庫)から、リーファーコンテナに変更する。
品質面では尾肉などの高級品を船内で熟成後に急速冷凍して超低温で保管し、適切な解凍を行うことで、生肉と遜色ない冷凍商品を提供できるようになるという。
プロペラシャフトの軸受を油循環から水循環に変えることで油の漏えいリスクをなくすほか、燃費向上につなげる。真空式のトイレを採用し、清水使用量と汚水発生量の削減を図る。
現在の「日新丸」が進水したのは1987年で、元はトロール船だった。91年に共同船舶が購入し、調査捕鯨母船へと改造した。ただ、近年では老朽化が進んでおり、高騰する修繕費への対応も課題だった。新たな捕鯨母船を建造し、品質向上と環境対応を両立したい考えだ。
日刊工業新聞 2022年2月16日