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クジラの体表を歩いて生態調査するロボット―無動力で水流さかのぼる

クジラの体表を歩いて生態調査するロボット―無動力で水流さかのぼる

開発したロボット用機構(山形大提供)

 山形大学大学院理工学研究科の妻木勇一学科長・教授らは、無動力で水流の上流にさかのぼるロボット用の機構を開発した。水流を受けてプロペラが回る力を利用し、8本の脚が4本ずつ交互に前進する。脚には吸盤が搭載されており床面に密着する。鯨の生態観察用に鯨の体表を歩くロボットとして開発を進める。

 プロペラの回転力をベルトとプーリーで脚の駆動力として伝える。複数のリンクを組み合わせるリンク機構に比べて力の損失が減り、水流に対抗してさかのぼれるようになった。毎秒2メートルの流れの中で毎秒1・3ミリメートルで前進する。

 また、各脚の先端に弁を組み込んだ吸盤を搭載した。床に吸着する際には床に押しつけると弁が開き、吸盤内部の水が抜けてくっつく。脚を持ち上げる際にも弁が開いて吸盤が剥がれる。

 脚が4本ずつ交互に動いて歩く仕組みで、常に4点で固定されるため水流の変化にも対応できる。実験で機体が張り付いた板を水中で振り回しても剥がれないことを確認した。

 今後、深海用カメラを搭載し、マッコウクジラの体表に取り付けて生態を観察する計画を立てている。ロボットが鯨の口元に移動し、鯨がダイオウイカを捕食している様子など、深海での鯨の生態撮影を目指すとしている。
日刊工業新聞2016年10月27日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
生態のわかっていない動物を調査するためにロボットやセンサなどが多く用いられていますが、破損や回収が困難などのトラブルがつきものです。無動力であれば破損のリスクも少し下がるのでしょうか。

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