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東芝の再編計画変更に見る、アクティビスト影響回避の思惑

東芝は、空調子会社の東芝キヤリア(川崎市幸区)株式55%を合弁相手で同業の米キヤリアに売却する。譲渡額は約1000億円で、9月30日までの手続き完了を予定。事業ポートフォリオ見直しの一環で、売却で得た資金は株主還元などに充てる方針だ。また、2021年11月に公表していたグループ再編計画の変更も明らかにした。

東芝の綱川智社長は7日開催の投資家向けオンライン説明会で「空調、昇降機、照明、そして東芝テックを非注力事業と特定した。それぞれの市場環境と産業構造を踏まえ、外部資本を導入するとともに価値の顕在化を目指すのが最善と判断した」と述べた。

東芝キヤリアはこれまでビル用エアコンや熱源機などを手がけてきた。20年度の売上高は908億円で、営業損益が31億円の赤字だった。今回東芝の連結対象から外れるものの、同社は引き続き5%の株式を保有して東芝ブランドの空調システム販売を継続する。株式売却に関連して22年度に営業外収益を計上する見込みだが、詳細は精査中とした。

また、昇降機と照明子会社についても売却手続きを始め、22年度中の最終合意を目指す。一連の子会社売却に伴い、今後2年間の株主還元を21年11月公表比3倍の3000億円に拡充する。

一方、グループ再編計画は当初の3社分割から東芝を含む2社分割に修正した。パワー半導体やハードディスク駆動装置(HDD)、半導体製造装置などのデバイス関連事業のみを23年度下期に分割・上場させる計画に見直した。綱川社長は「会社分割を確実に実現し、スピンオフの安定性を高めるための決定だ。それぞれのビジネス特性を生かした体制に進化する思いに変わりはない。株主と向き合うことを回避するために変更したわけではない」と短期間での計画変更に理解を求めた。

ただ、2社分割への見直しはアクティビスト(物言う株主)の影響回避の思惑が見える。3社分割は株主総会で3分の2以上の賛成が必要だが、2社分割の場合は産業競争力強化法で経済産業省から特例認定されれば過半の賛成か、取締役会決議だけで済む可能性がある。株主軽視と受け止められて両者の関係がさらに悪化しそうだ。

日刊工業新聞2022年2月8日

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