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データでヘルスケアDX後押し、三井物産の勝算

三井物産がヘルスケアのデジタル変革(DX)に商機を見いだす。ヘルスケア分野で新会社の設立や業務提携を進め、病院における人員配置を最適化するサービスなどの開発、提供に取り組んでいる。堀健一社長は「デジタル技術を使い、ヘルスケアを将来の収益の柱に育てようとしている」と力を込める。(森下晃行)

2021年11月に設立した三井物産子会社のイノシア(東京都千代田区、回谷信吾社長)は1月、看護師業務を支援するドクターズモバイル(東京都港区)に出資。さらに連携の第2弾として医療情報通信技術(ICT)サービスを開発・販売するヘルシーワン(福島県いわき市)とも業務提携した。

イノシアとヘルシーワンは共同で病院の職員情報を一元管理し、ガバナンスを強化するサービスを企画・開発する。イノシアの回谷社長は「23年上期にはデジタル問診システムも揃えたい」とソリューション拡充に意欲的だ。

三井物産は他にも、21年に人工知能(AI)を使った創薬支援を手がけるスタートアップのゼウレカ(東京都千代田区)を設立。企業向けメンタルヘルスケア事業を手がけるヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス(HD)も買収するなど、積極的に動いている。

また出資先であるマレーシアの病院グループ・IHHヘルスケアをはじめ、グループを通じて世界中から得られる医療データに強みを持っており、予防や未病、創薬支援などにデータ活用を検討している。技術とデータの掛け合わせが成長のカギを握るため、三井物産の堀社長は「病院プラットフォーム(基盤)から得られる医療データに加え、創薬や医療機器に関わる周辺事業を手がけてきた利点は大きい」と強調。今後もヘルスケア分野を強化していく方針で、同分野で26年までに1000億円超のEBITDA(利子・税金支払い前、償却前損益)達成を目指す。

同分野は景気に左右されにくく安定的な収益を見込める。そのため他商社も強化に動いている。住友商事は21年、ベトナムのマネージドケア大手に出資。双日もトルコなどで病院運営事業を手がけるほか、遠隔医療サービスのスタートアップに出資した。競争が厳しくなっていく中、三井物産は「ウェルネス・オール・三井」を掲げ、全社横断の連携で同分野のさらなる強化を目指す。

日刊工業新聞2022年2月4日

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