国際協力銀行が日本発スタートアップに初融資、イノベーション促す
国際協力銀行(JBIC)は日本発スタートアップの海外事業展開支援を加速させる。人工構造たんぱく質素材を開発するSpiber(山形県鶴岡市)の米国法人に初のスタートアップ向け融資を実行したほか、積極的にリスクマネーを供給する「海外展開支援出資ファシリティ」を活用し、スタートアップへの出資に乗り出している。JBICは「イノベーションの促進に向けて、資金面で積極的に協力していく」(関根宏樹経営企画部特命審議役)考えだ。(編集委員・川瀬治)
Spiberはクモ糸繊維の人工合成に成功したことをきっかけとして2007年に設立したスタートアップ。人工構造たんぱく質素材「ブリュード・プロテイン」を開発した。同素材は食物由来の糖類を主原料に使用し、微生物による発酵プロセスで製造する。カシミヤ・ウールのような紡績糸やシルクのような光沢と繊細さを持つフィラメント糸、アニマル・フリーファー、アニマルフリーレザーなどの用途で研究開発を進める。アパレル分野ではすでに製品化した実績がある。
JBICは同素材を日本発の基幹素材として着目。21年10月に50億円の貸し付け契約を結んだ。三菱UFJ銀行との協調融資で計100億円を融資。米国でのブリュード・プロテインポリマーの製造工場の立ち上げを支援する。
JBICはこれまでも海外のM&A(合併・買収)やインフラ、資源分野などへの出資を積極的に行ってきた。19年に北欧・バルト地域のIT企業を投資対象とするファンドに約4000万ユーロ(約52億円)を出資したほか、20年に次世代蓄電池の開発を手がけるエクセルギー・パワー・システムズ(東京都文京区)のアイルランド法人に約400万ユーロ(約5億円)を出資した。
20年には三井物産と共同で米国カリフォルニア州の水素ステーション運営最大手の米ファーストエレメント・フューエル(FEF)に出資。JBICは約2300万ドル(約26億円)を出資した。FEFは13年創立のスタートアップで、トヨタ自動車やホンダ、カリフォルニア州公的機関の支援を受けて、約20カ所の水素ステーションを運営している。
「社会課題の解決に向け、脱炭素やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ(大量データ)、人工知能(AI)、ロボットに関連する分野で技術革新が起きている」と関根特命審議役。金融面から日本発のスタートアップの海外事業展開を後押しすることで、イノベーションの創出を目指す。