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国際協力銀行、新たな重点課題に中堅・中小支援を入れた理由

前田匡史総裁インタビュー
国際協力銀行、新たな重点課題に中堅・中小支援を入れた理由

JBIC公式ページより

 国際協力銀行は2020年度までの3カ年の中期経営計画の中で、産業界の新たな取り組みや変化に呼応した支援に取り組む意志を示した。既存産業の垣根を越えた生産性向上のための取り組みや先端技術・イノベーションの追求など「現代的課題」への取り組みを重視。中堅・中小企業向け支援もこれまでと違う角度で切り込む姿勢だ。前田匡史総裁に業務方針を聞いた。

―前中計とは異なる重点取り組み課題を編成しました。

「旧日本輸出入銀行法をベースにすると、これになぞった取り組み課題を掲げてしまいがちだ。ここから一歩抜け出し、法律の範囲内でどこまで現代的課題として行えるかを軸に据えた。従来の課題は、今回の重点取り組み課題の一つ『政策金融の着実な遂行と業務の見直し』の中に集約した」

―重点取り組み課題の「成長分野・新領域」「インフラ海外展開」など新たに項目建てした課題は中堅・中小も視野に入れたとしています。

「中堅・中小企業は、これまで一般的に大手企業の下請けという認識が強かった。だが、現在、情報通信技術(ICT)、人工知能(AI)といった新しい技術のもとで従来にはない産業分野が生まれている。中堅・中小でも光る技術を持っている企業はある。融資を定型的に行うのではなく、課題解決の提供という付加価値をつけたい。こうした企業支援が日本の競争力の強化につながると考える」

―一方、従来の中堅・中小の海外展開支援に対する地域金融機関などとの協調融資は目標件数が低めです。

「16年度までの3年間は年間100件を超えていたが、18年度からの3年間で240件とした。目標を高くしすぎるとノルマと勘違いする職員もでてきてしまう。これは経営のメッセージだ」

―地域金融機関との連携を今後どう進めますか。

「これまでも中堅・中小向けに協調融資する専門部署で地域金融機関と連携をしてきたが、より強化すべく10月に専任審議役を配置した。連携することで、地方で地域金融機関をメーンバンクとする、光る企業の海外展開を支援していきたい」

前田匡史総裁
日刊工業新聞2018年11月2日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
前身の日本輸出入銀行を含め、初の生え抜き総裁。職員にはこれまでの融資で培ったノウハウだけではなく、その企業の事業戦略が現実味があるかを理解し、想像する力を求める。「現場に行き、起きていることを自分の五感で判断しなさい」が口癖という前田氏。まずは現場を飛び回る総裁自身の現場力とその手腕が試される。 (日刊工業新聞社・山谷逸平)

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