パナソニックの成長を占う、空間除菌脱臭機「ジアイーノ」の勝算
パナソニックは、次亜塩素酸を用いた空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を国内外で拡販する。室内における空気への関心が高まりを見せる中、家庭・業務用以外での新製品を4月に発売。機器単品から設備・システム化へと領域を広げ、非住宅での需要取り込みにつなげる。空気環境は競合大手も各種製品を投入する。グローバルな販売網に強みを持つパナソニックにとっても2025年度までの同領域での勝負が成長を占うことになりそうだ。(編集委員・林武志)
パナソニックが4月1日に発売する天井埋め込み型ジアイーノは1台当たり125平方メートルの床面積をカバーできる。本体の価格は75万円、専用リモコンは同5万9000円(消費税抜き・工事費別)。13年に病院やクリニック、介護施設、ホテルなど向けの業務用で、17年に家庭用でそれぞれ発売してきたジアイーノは出荷累計30万台突破の実績を持つ。天井型の新製品は今後2年間で2000台の販売を目指す。
「(室内空気質を示す)『IAQ(インドア・エアー・クオリティー)』の事業では空気質の改善で健康寿命の延伸と労働生産性の向上、コロナ禍で注目を集めたパンデミック(世界的大流行)への対応で社会課題の解決に貢献する。除菌の観点で大きな役割を果たせるのがジアイーノだ」とパナソニック空質空調社の小笠原卓副社長はこう強調する。
天井埋め込み型の新製品は専用ダクトから清潔な空気を室内へ供給する。部屋ごとに本体を設置する必要がなく複数の部屋で同時運転でき、自動給排水式により給水・排水の作業が不要で手間なく連続運転を実現できるのが特徴だ。非住宅向けの業務用単品で従来、床面積90平方メートル程度までのカバーを同125平方メートルまで広げることなどを訴求し、非住宅領域で事業拡大を目指す中核商品に育てる。
ジアイーノの事業売上高は20年度実績で124億円だった。25年度にはこれを500億円に引き上げる目標を掲げる。小笠原副社長が「非住宅向けの成長を“トリガー”とし、国内外の展開で拡販を目指す」と意気込むように、20年度実績で50%程度だった非住宅比率を25年度には60%に高めたい考えだ。
ジアイーノは13年の日本を皮切りにアジアや中東・欧州でも発売してきた。今後は北米市場でも商機を探り、現状10%程度の海外売上高比率も25年度に50%に伸ばす。空気清浄機は空調大手のダイキン工業、「プラズマクラスター」製品を持つシャープ、微酸性電解水を活用した業務用製品「ピュアウォッシャー」を12年に発売しているクボタなど大手メーカーの参入も多い。
天井埋め込み型ジアイーノの発売日は、パナソニックホールディングス(HD)のスタートと同じ4月1日。目標とする25年度の事業売上高500億円はオール・パナソニックにとりニッチ領域となる。ただ競合ひしめくコロナ禍の室内空気需要の取り込みで存在感を示せるかは新生・パナソニックの成長への試金石になりそうだ。