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世界初の南極無人機飛行に成功した企業。3000kmの長距離を30時間飛行できる新型機の開発に挑む

フジ・インバックが開発へ

フジ・インバック(横浜市磯子区、田辺誠治社長)は、3000キロメートルの長距離を30時間飛行できる無人機(UAV)を2021年末までに開発する。2500キロメートルの距離を24時間飛ぶ無人機(写真)を製作済みで、この技術や経験を基に機体を軽量化。エンジンも低燃費に改良して実現を目指す。翼幅5メートル、機体重量は45キログラム程度を予定。価格は海外製に比べて安価な1億5000万円程度に抑えられると想定する。安価と国産を売りに、防衛省など官公庁に売り込む。

同社は2008年に世界で初めて南極での無人機飛行に成功した。東日本大震災での東京電力福島第一原子力発電所上空からの空撮飛行、西之島火山観測の空撮飛行、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の依頼による「はやぶさ2カプセル回収プロジェクト」参加など、数多くの無人機開発実績がある。

試験機の運用では2500キロメートルの長距離飛行のほか、物資輸送で積載重量50キログラム、高度5700メートルまでの上昇記録などを達成した。フライトコントロールコンピューターやソフトウエア、4サイクルガソリンエンジンなどを内製化しているのが強み。マイナス20度Cの寒冷地や50度Cを超す高温地など過酷環境に合わせた機体を開発できるのも特徴だ。

航続距離3000キロメートルの機体では翼形状の改良や車輪を引き込み式にするなどして空気抵抗を減らし、エンジンの低燃費化と合わせて達成を目指す。

航続距離が3000キロメートルあれば島しょ警備でも運用が可能になる。南海トラフ地震のような広範囲の災害における被害状況調査にも利用できる。同レベルの性能を持つ海外製無人機では2億―3億円するのが実情だ。

日刊工業新聞2021年7月21日

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