鉛フリーで200℃耐熱、パワー半導体用ハンダ量産へ
タムラ製作所が開発
タムラ製作所は実装後にハンダ周囲の温度が200度Cまで上昇しても接合状態が劣化しないパワー半導体向け鉛フリーハンダ接合材を開発した。炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウムを基板に使い、接続部の温度が高くなる次世代パワー半導体などでの使用を見込む。3月からサンプル提供を始め、2023年以降の量産化を目指す。
電気自動車(EV)や産業用電源向けに需要拡大が期待されるパワー半導体の素子接続部は、使用時に150度C前後の高温になる。SiCやGaN、酸化ガリウムを使った次世代パワー半導体の場合、接続部の温度は200度C前後に高まるとされる。
スズに微量の銀や銅を添加した一般的な鉛フリーハンダでは耐熱性が足りないケースが多い。タムラ製作所が開発した新しい鉛フリーハンダの組成は、スズにアンチモンや銅などを添加し、耐熱性を確保した。
通常の鉛フリーハンダの場合、実装すると接続部材のメッキ上に化合物の層を形成する。この層が割れなどを引き起こし、接合部の劣化を招く。タムラ製作所によると、今回の新製品は組成上、層が形成されず、接合部が劣化しにくい。
信頼性試験では従来の同社ハンダ製品の2倍以上のサイクル寿命が経過しても、高い接合率を維持した。
組成のうちスズとアンチモン、銅までは従来品と同じなため、接合方法を変えたりする必要がなく、需要家の負担を少なくできる。製品は市場の要望が多い無加圧接合が可能なシート状で販売する。
タムラ製作所の子会社、ノベルクリスタルテクノロジーは21年、次世代パワー半導体材料である酸化ガリウムの100ミリメートルウエハーの量産に世界で初めて成功した。同社は今後、材料とハンダの両方をグループとして提供できる体制を整え、市場を開拓する。
日刊工業新聞2022年1月5日