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セイコーが半導体前工程を停止、外部企業に完全委託の狙い

セイコーNPC(東京都台東区、遠藤洋一社長)は、半導体の前工程の製造を外部企業に完全委託する。早ければ2022年9月にも那須塩原事業所(栃木県那須塩原市)の前工程の生産ラインを停止する。前工程の製造プロセスの高度化に向け設備更新の必要があったが、製造装置などに高額な費用が発生することを踏まえ断念。広がる需要を取り込むためにも、半導体受託製造(ファウンドリー)の活用を拡大し、半導体の開発や後工程の製造に経営資源を集中させる。

セイコーNPCはセイコーホールディングス(HD)の子会社。水晶発振器用のICやセンサー、エンコーダーなどの半導体製品の開発、製造、販売を手がける。これまで半導体の前工程の製造では約半分をファウンドリーに委託し、残りを那須塩原事業所で手がけてきた。今後は全て委託する。

半導体の製造はウエハーに電子回路を形成する「前工程」と、前工程で回路を形成したウエハーをチップサイズに切り離し、樹脂などでパッケージング加工して検査する「後工程」に分かれる。

同社は那須塩原事業所の同一建屋内のフロアを区切り、前工程と後工程の製造を行っている。生産停止する前工程フロアの今後の用途は検討中。同事業所全体の従業員は約200人で、前工程の製造に携わる人員は開発や後工程の製造要員として転換する予定。

半導体の前工程は後工程と比べて製造プロセスが複雑で、製造装置の導入など設備の新設・更新には多額の費用がかかるとされる。セイコーNPCは、前工程の自社製造を中止し、開発、後工程の製造の受注を増やしたい考え。

同社は水晶発振器用ICで高シェアを握る。同ICはスマートフォンやパソコン、薄型テレビ、携帯基地局などで使われる。コロナ禍による巣ごもり消費の拡大や第5世代通信(5G)普及などを背景に需要は拡大しているとみられる。

半導体前工程ラインを停止する那須塩原事業所。水晶発振器用ICの需要が広がり、今後は開発などに経営資源を集中
日刊工業新聞2021年12月23日

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