2021年のベスコスは?マスク生活が影響したコスメの流行り
アイスタイル(東京都港区、吉松徹郎社長兼CEO)は、生活者に支持されたコスメを総括する「@cosme ベストコスメアワード 2021」を発表した。実際に商品を使用した口コミサイト「@cosme」の会員から、2020年11月1日~21年10月31日に寄せられたクチコミをもとに、生活者が支持している商品をランキング形式で表彰する。
アイスタイルによると、今年は前年比1.2倍の約112万件のクチコミ投稿が寄せられた。コロナ禍ではこれまでのように気軽に店頭に立ち寄りテスターを試すことができない。そんな中ECサイトでの購入を失敗しないためにも、「『購入するにあたって必要な情報を届けたい』 という生活者同士の『助け合い』的な気持ちがクチコミ投稿が促進された」(アイスタイル)という。
マスク生活がもたらしたスキンケア需要
@cosmeベストコスメアワード2021の総合大賞を受賞したのはイプサ化粧水「ザ・タイム R アクア」だった。2年連続でスキンケア商品が総合大賞を受賞し、総合第2位もスキンケア商品だった。2020年度と同様にスキンケア商品が総合1~2位を占めたが、その背景にある生活者の心理には違いがあるようだ。
アイスタイルによると、20年度のスキンケア商品の大賞受賞は、「ポジティブな需要」による受賞だった。緊急事態宣言発令による「STAY HOME」や企業のテレワーク促進、マスクの日常化による化粧をする機会の減少から、生活者の関心がメイクアップからスキンケアへと移った。一方、21年度は、長引く新型コロナの感染拡大やそれに伴う生活の制限で、外的内的ストレスに影響を受けやすい肌の調子を「安定させたい」という消費者の気持ちが反映されたのではないかと考えられる。
メイクアップは「ナチュラル」な「抜け感」がトレンド
口コミに登場するワードを分析すると、メイクアップでは「抜け感」というワードが登場する割合が増加した。2021年度は完璧に作りこんだメイクではなく、作りこみすぎない「抜け感」のあるナチュラルなメイクが支持されている。マスク生活をきっかけにファンデーションを塗らず、化粧下地やコンシーラー、フェイスパウダーのみでベースメイクを仕上げる「ノーファンデ」が増加した。例年ベースメイクに求められてきた「カバー力」や「崩れない」というワードの出現率は軒並みダウンしている。一方で、商品の機能面ではなく、「血色感」といった肌そのものの健やかさを連想させるワードが増加傾向にある。
マスクから「見える部分」と「見えない部分」
メイクアップのカテゴリ別のクチコミ投稿比率を見てみると、「リップ」カテゴリが大きく落ち込むなか、「アイブロウ」カテゴリは2年度連続で伸長した。“マスクとメイクとのバランス“を気にする人が増え、マスクをしていても人の目に触れるパーツである目元のメイクアイテムに注目が集まっている。アットコスメの新体験フラッグシップショップ@cosmeTOKYO(渋谷区)の店頭では、20年10月と21年10月の売上を比較すると、マスカラが前年比145%、アイライナーは同150%、眉については同157%と大きく伸びたそうだ。
リップカテゴリは前年から引き続き消費の落ち込みが見られるが、今年5月に発売してから、わずか半年で総合第3位を受賞したスターアイテムが誕生した。マスクにつきにくい・色落ちしにくい口紅として累計出荷120万本を突破したケイトの「リップモンスター」だ。マスクにつきにくい・色落ちしにくい「機能性」に加えて、「使用感・品質の良さ」、SNSを中心とした「盛り上がり」、誰でもアクセスしやすいドラッグストアを販売チャネルとする「利便性」、売り切れ続出の「希少性」と、様々な相互作用がここまでの支持を生み出した。さらに、『11色展開という豊富なカラーバリエーションや「ラスボス」や「2:00AM」等、 心くすぐるカラーネーミングで収集欲を誘ったことも、3 位受賞の後押しとなったのではないか』とアイスタイルは分析する。
コロナは新たにオミクロン株が発生するなど、感染者数は減ったといえどまだまだ予断を許さない状況だ。マスク生活が続いていく中、カラーマスクや小顔に見えるマスクなど、ファッションとして楽しむ需要も見られる。一日中マスクを着けていることが増えたからこそのスキンケアや、マスクから見える部分のメイクがポイントになるなど、余儀なくされているマスク生活のなかでもメイクやスキンケアを楽しむ消費者の傾向が見えた。