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大型買収で有利子負債3兆円、セブン&アイが財務健全化へ取り組むべき優先課題

セブン&アイ・ホールディングス(HD)が大型買収に伴い財務の健全化を急ぐ。約2兆3000億円を投じ、米ガソリンスタンド併設型コンビニエンスストアを買収。有利子負債は2021年8月で3兆1159億円にまで膨らんだ。持続的な成長に買収が不可欠だったと評価を得る上で、今後の業績と財務健全化の進展が重要になってくる。

セブン&アイが財務健全化の指標とするのが「EBITDA有利子負債倍率」。すぐに返済できない借入金がEBITDA(利払い税引き償却前利益)の何倍かを示す数値で、現行の中期経営計画で25年度目標を連結で2倍未満としている。

20年度実績は2・81倍。21年度は買収で有利子負債が膨らみ、倍率が大幅に高まる。22年度以降、いかに計画通りに倍率を下げていけるかがポイントとなる。

そのための優先課題の一つが買収効果の最大化だ。海外コンビニ事業を「グループ成長のメーンドライバー」と位置付け、特に北米での成長拡大を重要テーマにしており、シナジーの早期発現・拡大にはスピード感が求められる。

そのシナジーは、入手3年目の23年5月―24年4月に6億―6億5000万ドル(約678億―735億円)になる見込みだと10月に公表。買収を決めた20年8月の公表値を買収後の21年7月に修正し、今回が2度目の上方修正だ。シナジーは当初の見込みに比べ約1・2倍に拡大する。

井阪隆一社長は「(7月に)上方修正したが、その後の精査でさらに上方修正させてもらう」と述べた。プライベートブランド(PB)の導入や品ぞろえの見直しなど商品関連を主体に拡大できると想定している。

北米事業は足元も堅調で、現状は計画通りといえる。ただ、約1兆3000億円ののれんの償却が重くのしかかる。20年償却で毎期650億円の負担となり、著しい低迷となれば巨額の減損処理などのリスクが伴う。「3年目以降も取り組みを進めシナジー拡大を目指す」(井阪社長)方針で、買収効果の創出を加速させていく。

日刊工業新聞2021年11月4日

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