AI/IoT活用でメンテナンスや管理を最適化へ、海外でも活躍する「水ビジネス」最新技術!

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水ビジネス市場のなかで、各分野で国内トップの売り上げを誇るクボタと栗田工業。両社は、長年にわたり培われた専門技術と経験の蓄積に加え、人工知能(AI)やIoTなどの最新技術を活用した新たなビジネスを展開している。

コア製品である鉄管をメインに、水事業全般のソリューションを提供

クボタは1910年代から鉄管を輸出しており、日本の鉄管製造の約6割のシェアを誇る。水事業に関連する鉄管製品を供給するとともに、インフラが脆弱な東南アジアの新興国には、ゼロから水道整備を構築するノウハウを提供。さらに、自然災害リスクの高い地域には地震に強い耐震管を、水道管路網の老朽化が進んでいる地域には、管の腐食に関する固有技術を活用した最新の管路診断などを提供している。環境海外推進部営業課 課長 吉川浩臣氏に話を聞いた。

—近年では、地震や洪水など激甚化する自然災害に対する水のレジリエンス(強靭化)の構築も重要になっています。貴社は世界最大口径2.6mのダクタイル鉄管※1の製造や世界初の耐震型ダクタイル鉄管の開発に成功されるなど、災害に強いインフラ技術をお持ちですね。

※1 鋳鉄組織内の黒鉛を球状化し、強度や延性を高めた「ダクタイル鋳鉄」を使用した鉄管。水道管、ガス管などに採用されている。

「ダクタイル鉄管は、耐震性能に加え、施工のしやすさ、長寿命化といったモデルチェンジを繰り返し、国内外で性能を評価されています。2012年には、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで試験採用され、その後サンタクララで大口径耐震型ダクタイル鉄管が採用されるなど、地震の多いアメリカ西海岸地域の受注が拡大しています。また、貴重な飲料水を安全に届ける技術として、中東やアジアなど世界各地で当社のダクタイル鉄管が採用されています。さらにバルブやポンプ、膜処理施設、浄化槽など、水インフラの上流から下流まですべての過程において、最適な製品を幅広く展開しています」

米国サンタクララで採用された北米初の大口径耐震型ダクタイル鉄管

—ミャンマーのティラワ経済特区での水処理システムの受注案件では、まさに“今”の世界に必要とされる、環境に配慮した内容が盛り込まれています。

「これまでのノウハウをベースに、安全な水の供給はもちろん、環境に配慮したシステムを構築しました。取水・給水にはダクタイル鉄管を採用され、浄水場・下水処理設備にはランニングコストの低い当社独自の方式が採り入れられています。クボタならではの管路と水処理システムの総合提案ができた好例で、水インフラのトラブルは経済活動に直結するため、維持管理面でも体制を整備してサポートしております」

ミャンマー・ティラワ経済特区の水処理システム

埋設された目に見えない水道管の寿命を数値化

—2021年に東京大学との共同研究で構築した、新たな老朽度診断の提供を開始していますね。具体的にはどのようなシステムなのでしょうか。

「水道の管路整備がほぼ完了した先進国では、水道管路の老朽化が深刻な問題です。重要な社会インフラである水道管路は、将来に向けて健全な状態を維持することが不可欠で、そのために水道管を適切に更新・交換する必要があります」

「しかし、水道管は土の中に埋設されて可視化できないことから点検や診断が難しく、従来は法定耐用年数など漠然とした時間経過で設備更新を計画していました。そこで、当社が長年蓄積してきた約6,000件の腐食調査データと埋設環境データをもとに、機械学習を行い、老朽度をより高精度に評価できる技術を開発しました。これを導入することで管路ごとの漏水危険度を“見える化”できるので、具体的な数字を提案しながら更新計画が立てられます」

—先端技術はもちろんですが、これまで長年にわたり蓄積したアナログ的なデータの蓄積も大切ですね。

「はい。日本の地図上に管路の情報を重ね合わせたものが我々の“財産”です。また、鉄管の耐用年数は、周辺の土壌の質、腐食の度合いにも左右されることがわかっています。水道管を掘り返して人間の目で見る昔からの手法も含め、これらを統合して体系化し、管路診断ができるのが当社の強みです」

「水は地球上の生物にとって不可欠な存在である半面、水災害によって生命が脅かされることもあります。我々のような企業がどう寄り添い、コントロールして社会に貢献していくか。それが使命と言えるでしょう」

現場一筋、水処理産業のDXへの挑戦

栗田工業は、水処理薬品、水処理装置、およびメンテナンスサービスの事業領域において、水処理に関する商品・技術・サービスをかけ合わせた総合ソリューションを提供する。国内では最大手の産業用水処理企業だ。近年、北米、欧州、アジアにおいて現地の水処理薬品企業等の戦略的投資と買収により、海外での事業拡大を進めている。

2018年には、米国のITベンチャー企業Fracta社を子会社化し、デジタル技術による水処理事業の変革に挑戦している。

常務取締役グローバル営業本部長 鈴木 恭男氏(兼WRC推進グループリーダー)、デジタル戦略本部副本部長 水野 誠氏、経営管理本部CSR・IR部長 新井 孝輔氏(兼 WRC推進グループサブリーダー)、経営管理本部 WRC推進グループサブリーダー 本幡 照文氏(兼経営管理本部CSR・IR部 社会貢献課長)に話を聞いた。

—貴社は31社の海外事業会社があり、近年では特に北米でのM&Aが活発です。現地で同業の水処理薬品・装置の製造・販売企業に戦略的な投資を行い、グローバルでの事業基盤を強化しています。一方、2020年4月にDXを推進する「デジタル戦略本部」を新設し、5月には子会社であり、水処理に関わるデジタル技術を専業とするFracta Leap社と共同でメタ・アクアプロジェクト※2を発足しました。水処理におけるDX、AI・IoT製品の開発に取り組まれるなど、この数年でビジネスプロセスとビジネスモデルの変革に着手していますね。

※2 水処理インフラの持続可能性のために、デジタル技術による抜本的な生産性改善に資するAI・IoT技術を用いて、水処理プラントのエンジニアリングおよび運転管理のスマート化(効率化・高度化)を推進

「お客様の事業継続や社会課題の解決に貢献する「水」のソリューションを提供し続けることが、当社の存在意義であると考えています。そして更なる価値創出のため、水処理産業のDXに注力しています。水道管の破損確率や最適な交換時期を導き出すなど、AIや機械学習などデータサイエンスのエキスパートであるFracta社を買収しました。当社が蓄積した水処理技術とノウハウに、Fracta社が持つ最先端デジタル技術を融合することで、社会価値と顧客価値を深く結びつけた「B2B2S」(Business to Business to Social)型のソリューションを実現したいと考えています」

-プロジェクトでは、AI技術を活用し、新たに逆浸透(RO)膜※3装置の運転最適化に取り組んでいるそうですね。現在実証を経て特許を出願し、2021年度中を目途に国内外での商用化を検討中とのことですが、どんな成果が確認されましたか。

※3 水中のイオン類や有機物を除去する膜で、主に半導体・液晶の製造に必要な超純水や、工場の排水回収、海水淡水化プラントなどの分野で使用される。

「水処理プロセスの中で、運転コストと電力消費量の占める割合が高いRO膜と周辺機器を対象に、データサイエンスによって過去データなどから同装置の運転操作を最適化しました。開発したソリューションを用いて、実際の装置で検証した結果、RO膜の周辺機器においては、従来比で電力コストの約4割、CO2排出量の約1割という削減効果が確認できました。RO膜装置以外の最適運転ソリューションも開発中で、それらを束ねた複合型サービスとして展開する予定です。当社はグローバル企業ではありますが、企業風土は毎日コツコツと積み上げていく現場主義がモットーです。現状はRO膜装置の最適運転などのスモールスタートですが、デジタル変革を通じて、社会価値と経済価値の両立を引き続き追求していきます」

RO膜装置のAI最適運転を実プラントで検証

国際的ネットワークの参画を通じて社会貢献を

—様々な産業のCEOが主導し、世界の水資源保全に取り組むWRC※4の設立会員として参加されています。貴社の水に関する知見や世界市場での経験を、持続可能な社会の実現に向けて活かすことができる興味深い活動だと思います。

※4 Water Resilience Coalitionの略。水資源の問題が深刻な世界各流域にて、産業界主導で資源の保全・回復に取り組む国連グローバル・コンパクトのイニシアチブ。マイクロソフト、スターバックスなどが設立会員。

「WRCでは世界の水資源に関する危機感を共有するグローバル企業が集まっています。そこで、2030年までに世界で30億人の水環境を改善し、2050年までに必要な場所に、必要な量と質の水を安定的に供給できる世界を創る、という目標を掲げて取り組みを行っています。なぜなら、遠くない未来に非常に厳しい水不足が予想されているからです。世界的な水資源の枯渇は、水の奪い合いなどに発展することも考えられます。WRCでの活動を通じて、これまでの水に関する知見や取り組みが、ダイレクトに平和貢献できるチャンスだと思っています」

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