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クボタがインドで勝負に出る。世界有数規模になる農機市場で打破すべき現地事情

価格・機能の二兎追う
クボタがインドで勝負に出る。世界有数規模になる農機市場で打破すべき現地事情

農機成長市場のインドでの勝負に打って出るクボタ(現地仕様のトラクター=同社提供)

クボタが農業機械市場で世界有数規模になる見通しのインドで勝負に出る。2022年3月末までに約1400億円を投じて、販売台数ベースで同国第4位の農機メーカー、エスコーツを子会社化する。インドは27年にも中国を抜いて世界一の人口大国になるとみられる。人口増とともに増える食料需要を農機で支える必要があるが、インドならではの現地事情を打破しなければならない。クボタの成長を占う上で試金石となりそうだ。(編集委員・林武志)

「30年までに両社合わせてインドでのシェア(販売台数ベース)を25%に引き上げたい」。クボタの北尾裕一社長はエスコーツの子会社化について、こう意欲を示す。インド農機市場に08年参入したクボタだが、同国でのシェアは現状2%程度にとどまっていた。シェア約11%のエスコーツとシナジー(相乗効果)を高めて、倍増規模を目指す考えだ。

両社はインドで相互に開発・製造に取り組み、ハイエンドからベーシックまで幅広く農機をそろえる。「価格帯は我々の製品より3割以上安い」(渡辺大取締役専務執行役員機械事業本部長)という低価格製品を供給できるエスコーツのノウハウと融合させるが、北尾社長が強調するのは「“クボタ品質”にしないといけない」。クボタにとっても価格と機能を両立させる二兎を追う挑戦となる。

インドの農業事情に詳しい名城大学の杉本大三教授は「現地では『カスタムハイアリング』と言われる耕運・収穫の作業者が農家や事業者により、1エーカー当たりいくらという契約で請け負われている」と指摘する。機械作業の請け負いシステム発達で農家の農機所有も少ないが、杉本教授は「現地事情に精通したエスコーツと技術力のあるクボタのタッグで新しい農機開発ができれば成功が期待できる」と見通す。

米調査会社レポートオーシャンが10月にまとめた農業用トラクターの世界市場動向によると、27年までの期間で年平均6%以上の成長が見込まれている。インドはその成長をけん引するが、現地最大手のマヒンドラ・アンド・マヒンドラや農機世界最大手の米ディア・アンド・カンパニーなど強敵も目を向ける。

創業130年超で最大のM&A(合併・買収)にかじを切ったクボタ。11月は創業者、久保田権四郎の命日月でもある。北尾社長は20年のトップ就任後、年1度は生誕地の因島(広島県尾道市)を訪れてきた。権四郎翁にインドでの成長を報告するためにも、これから正念場を迎える。

日刊工業新聞2021年11月25日

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