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廃棄繊維を「色」でリサイクル、テキスタイルデザイナーが歩んできた険しい道のり

廃棄繊維を「色」でリサイクル、テキスタイルデザイナーが歩んできた険しい道のり

雑多な廃棄繊維を糸に再生

廃棄繊維は年間200万トンにも及び、そのうち衣料品が半分を占めているとされる。リサイクルされているのはごくわずか。80%が焼却処分されているという。ペットボトルやアルミ缶などと比べ、リサイクル率は極端に低い。テキスタイルデザイナーだった内丸もと子氏はこんな現状に衝撃を受け、2019年にカラーループ(京都市下京区)を立ち上げた。

繊維リサイクルが進まない原因は多々あるが、多種の繊維が混紡・混繊されていることや、品質表示のタグが色あせなどで素材識別が難しいこと、そして繊維リサイクルに関する法律が存在しないことも大きい。一部リサイクルされているものも軍手や災害用毛布など、消費者にとって魅力のないものだった。そこで「魅力的な商品を開発することで、消費者の意識を徐々に変えることができるのでは」(内丸もと子最高経営責任者〈CEO〉)と考えた。

廃棄された繊維製品(大阪・泉州地区で、同社提供)

具体的には廃棄繊維を色で識別してリサイクルし、新しい素材開発に乗り出した。内丸CEOは京都工芸繊維大学大学院で研究を開始する。しかし道のりは険しかった。効率よくリサイクルするには色ごとに数値化する必要があり「それだけで3年かかった」(同)という。それでも分別した繊維から種々の製品を考案した。パルプや樹脂と混ぜれば独特の風合いが生まれることも分かった。大学院時代に知り合った成形加工メーカーや廃棄物処理業者、素材メーカーなどとネットワークを構築。共同で押し出しやシート成形、射出成形などさまざまな試作品を開発した。

これまで商品化したのはペンケースやマグネットバー、トートバッグなど。事業戦略としては素材販売とグッズ販売の両面で展開する。まだスタートアップの段階だけに、繊維の分別も手作業で行っている。需要が拡大すれば生産体制も構築せねばならない。課題山積だが「研究を開始した10年前と比べ、時代の追い風を感じる」(同)と手応えは十分あるようだ。

日刊工業新聞2021年12月9日

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