ニュースイッチ

ホンダの「脱エンジン宣言」、関係者が推察する社長の目的

ホンダの「脱エンジン宣言」、関係者が推察する社長の目的

会見で説明する、ホンダの三部社長(4月23日=東京都港区)

「電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の販売比率を2040年に全世界で100%にする」―。ホンダの三部敏宏社長が4月の就任会見で示した方針だ。日本企業が強みを持つハイブリッド車(HV)の選択肢すら断つ“エンジンのホンダ”の脱エンジン宣言に衝撃が走った。HVやプラグインハイブリッド車(PHV)などを含めた「電動車のフルラインアップ化」を進めるトヨタ自動車の姿勢と対照的だ。

三部社長の宣言は、50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けた強い決意の現れだが、その道筋は明確でなく、現状では目標が先行している状況といえる。唯一のFCVモデル「クラリティ フューエルセル」の販売は、生産拠点である狭山工場(埼玉県狭山市)の完成車ライン閉鎖に先立ち9月に終了した。

EVも現在のラインアップは「ホンダe」1種類のみだ。EV大国の中国では22年春に、ホンダブランドのEV「e:N(イーエヌ)」の第1弾を投入する。24年には同社初となるEV専用工場を2カ所で稼働予定だが、生産規模などの具体的な計画は非公表だ。

11月に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、40年までに発売する全ての新車を二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション車にする方針を宣言した。

ホンダを含め、日系自動車メーカーはこの宣言には参加していない。ただ世界で脱炭素に向けた動きは強くなっており、自動車メーカーは対応策を打ち出さなければ投資家らの理解が得られなくなっている。

脱エンジン宣言についてホンダの関係者は「社内のエンジニアらに刺激を与えること。それが三部社長の大きな目的だったのだろう」と推測する。脱炭素の時代に、どのように“ホンダらしさ”を発揮し、魅力あるクルマを出し続けるか。目標達成するための戦略をスピード感を持って描けるかが問われる。

日刊工業新聞2021年12月7日

編集部のおすすめ