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耐熱合金や高耐久電子材料の開発へ、東大がナノサイズの熱膨張を直接計測する技術

耐熱合金や高耐久電子材料の開発へ、東大がナノサイズの熱膨張を直接計測する技術

STEM内で加熱可能な試料ホルダー(東大提供)

東京大学の溝口照康教授と柴田基洋助教らは、ナノサイズ(ナノは10億分の1)の熱膨張を直接計測する技術を開発した。走査透過型電子顕微鏡(STEM)で電子線を照射して分光分析する。実際にセラミックス材料の界面の膨張率を測定した。変形量の少ない界面を作り込めば温度変化による劣化を抑えられる可能性がある。耐熱合金や高耐久電子材料の開発につながる。

STEMの電子線を使って電子エネルギー損失分光法で材料中の電子状態を測る。この計測波形には電荷密度を反映したピークが含まれており、ここに熱膨張で電荷密度が下がる影響が現れる。

チタン酸ストロンチウムの界面を700度Cに加熱して観察し、界面が結晶内部よりも約3倍膨らむ様子を捉えた。結晶内部に比べ1・4倍の膨張で済む界面もあった。すべての界面が均等に熱膨張するわけではない。局所構造の制御で界面の熱膨張や劣化を制御できる可能性がある。

構造材料や電子デバイスでは熱膨張の変形が繰り返されることで劣化が進む。新技術は界面に加えてガラスや複合材などの微小変形も計測できる。

日刊工業新聞2021年12月3日

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