「ビヨンド5G」電波の通り道を作る。産総研が開発した「反射板」の実力
産業技術総合研究所の加藤悠人主任研究員と大阪大学の真田篤志教授らは、第5世代通信(5G)の次の世代「ビヨンド5G」(6G)の候補である140ギガヘルツ帯(ギガは10億)の電波を特定方向に反射できる反射板を開発した。最大88%の反射率を確かめた。高周波数帯の電波は直進性が高いため、ビルの裏側などに回り込めない。そこで反射させて電波の通り道を作る。
1ミリメートル以下の金属パッチを周期的に並べた構造の「メタサーフェス」で反射板を作製した。メタサーフェス反射板を貼った壁面に140ギガヘルツ帯の電波が当たると60度方向に異常反射する。60度方向からの電波も同じ角度に異常反射するため、通信の上りと下りが確保される。
電波通信のためにビルや壁の向きは変えられないが、同反射板で方向を変えれば通信経路を確保できる。実験では7センチメートル角で、45度、60度、75度の方向に異常反射する3種類の反射板を用意した。それぞれ目的方向への反射と不要な方向への反射との比を140分の1以下、293分の1以下、28分の1以下に抑えられた。
屋内の通信確保や5Gの電波にも応用できる。
日刊工業新聞2021年11月29日