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“空から通信”に注力するNTT、ソフトバンクとの違いを生むカギ

“空から通信”に注力するNTT、ソフトバンクとの違いを生むカギ

無人機「ゼファーS」(ドコモ提供)

NTTが、成層圏や宇宙での情報通信技術(ICT)インフラ整備に力を注いでいる。傘下のNTTドコモは欧エアバスと共同で、高高度無人機(HAPS)からの電波伝搬実験に成功した。一方でNTTはスカパーJSATホールディングス(HD)とも宇宙事業で組んでおり、今後は各施策の位置付けの整理や相乗効果の模索が求められそうだ。他の通信会社と比べて個性や優位性を発揮していけるかも問われる。(編集委員・斎藤弘和)

ドコモは、高度約20キロメートルの成層圏を飛ぶエアバスのHAPS「ゼファー(Zephyr)S」を用いて、地上の受信アンテナへの電波伝搬測定実験を8―9月に実施。成層圏で18日間滞空した。周波数帯は450メガヘルツ(メガは100万)および2ギガヘルツ(ギガは10億)のUHF帯を使い、HAPSとスマートフォンの直接通信が約140キロメートルの距離でも十分な品質で行えることを確認できたとしている。

両社は今後、山間部や離島、海上への通信サービスの提供を可能にしたい考えだ。他方、NTTはスカパーと組み、HAPSや低軌道衛星(LEO)などを含む宇宙RAN(無線アクセスネットワーク)事業を2028年度に商用化する計画を掲げる。

現時点でこの計画とドコモ・エアバスの実証は直接の関係はないという。「(エアバスは)18日間の飛行実績も含めて期待できる選択肢の一つだが、最終的にどのHAPSをNTTグループが調達するかは未定」(NTT)。今後は運用や保守のあり方も含め、HAPSをめぐる枠組みを迅速に決めていくことが期待される。ソフトバンクは27年度ごろにHAPSを商用化する見通しで、NTTは性能などで違いを出すことも求められる。

カギを握るのは、次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」だ。NTTは同構想の実現に向け、光技術を半導体に取り入れて省電力化を図る「光電融合」技術の研究開発を急いでいる。HAPSに搭載する通信モジュールの消費電力を減らせれば、滞空時間が改善し、運用コストの低減につながる可能性が考えられる。

澤田純NTT社長は16日の講演でIOWN推進の背景の一つに災害の増加を挙げ、「自然は想定外だらけ。コントロールできない、との意識を持つべきだ」と語った。宇宙や成層圏からの通信は、地上の基地局が被災した際にも活用できると期待されている。IOWNが災害対策の高度化にどう貢献していくのか、注目が集まる。

澤田NTT社長は自然災害の脅威を指摘する(16日=オンライン講演)
日刊工業新聞2021年11月17日

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