藻類と魚介類にゲノム編集技術を適用して海中CO2削減、NTTが挑む仕組みとは?
NTTとリージョナルフィッシュ(京都市左京区)は、藻類と魚介類にゲノム編集技術を適用して、海洋中の二酸化炭素(CO2)量を減らす実証実験を始めた。二酸化炭素を吸収する藻類と、それをエサとする魚介類による炭素循環を活用した環境負荷低減技術として実用化を目指す。NTTは温室効果ガス排出量を2040年度までに実質ゼロにする目標を掲げて多様な研究を進めており、成果を社会に還元したい考え。
ゲノム編集技術の研究開発(R&D)では、NTTは藻類のCO2固定量の増加に、リージョナルフィッシュは魚介類の体内に固定する炭素量の増加に、それぞれ取り組む。CO2固定は無機的な炭素を、糖などの有機的な炭素化合物に変換して体内に取り込む過程を指す。この二つのゲノム編集技術を藻類と魚介類の食物連鎖に適用することで、海洋における炭素固定量を相乗的に増加させるCO2変換技術の確立を図る。
実証では、ゲノム編集技術を適用した生物を実環境へ放出させない拡散防止措置を施した陸上養殖基盤を活用する。これにより海洋生物へ影響を与えることなく、海洋中のCO2量のみを低減する枠組みを構築した。今後、実証を重ねることでCO2変換技術の実用化を図り、将来は同技術を魚類や農作物の生産量の増加や高品質化にも使うことを検討していく。
NTTは環境エネルギー分野の研究開発を担う「宇宙環境エネルギー研究所」を20年7月に設立し、同研究所でゲノム編集も手がけている。15日に報道陣の取材に応じた川添雄彦常務執行役員研究企画部門長は「ゲノム編集をすることで地球にどういう影響を与えるかは未知なので、十分に気をつけながらやる必要がある」と前置きした上で「CO2を一層吸収してくれる生物が生まれることがあり得るならば、試してみる」と述べた。
NTTは「R&Dフォーラム」で同実証の概要を紹介する。