ダイハツが推進する人事制度改革「高齢者の戦力化」の全容
ダイハツ工業は高齢者の戦力化を中心に、矢継ぎ早に人事制度改革を進めている。60歳から65歳までの雇用契約を一括して結ぶ再雇用制度を2019年10月に導入した。それまでの一律的な処遇から、再雇用前の階層と評価に基づき差をつける方式に改めた。さらに、体力が必要な生産ラインの最前線で働くほど処遇をよくし、全員へ評価に基づく賞与の支給も始めた。
コーポレート統括本部の豊田賢司副本部長は「再雇用後も意欲を落とさず正社員と同様に活躍してもらえる」と説明する。少子化やリーマン・ショック後の一時的な採用減で生産要員が不足し、働ける高齢者への期待は強い。若手に技能を伝承してもらうためにも処遇を改善した。
少子高齢化で企業の持続的な成長には高齢者が力を発揮できる環境作りが重要になる。一方で、体力低下や職場の高齢化は進むので、活性化も欠かせない。そこで22年春から、管理職のモデルとなる適齢にこだわらず若手を登用する人事を始める。「若い才能が早く育ち組織をリードする」(豊田副本部長)工夫にも腐心する。
さらに国による70歳までの就業確保義務化を見据え、25年からの新たな制度の準備も始めた。再雇用の原資確保、働きに見合う賃金体系、70歳までの雇用継続条件などを課題とし、労使協議を開始した。国の雇用制度改革も注視しながら設計を進める。
自動車業界はグローバル化や電動化などの激変が続き、ダイハツも勝ち抜く変革を求められている。20年8月には「MaaS(乗り物のサービス化)」「地域とのつながり」「暮らしと車」のテーマごとに、計3人の副業人材と業務委託契約した。優秀な人材を呼び込む狙いで、業界でも珍しい試みに800人超が応募した。「中途採用も含め変化に必要な人材を確保したい」(同)と意欲を示す。
日刊工業新聞2021年10月26日