三菱商事は2兆円規模、LNG投資を積極化する総合商社たちの戦略
総合商社は石炭や火力発電権益からの撤退を進める一方で、天然ガスへの投資を積極化している。石炭や石油に比べ二酸化炭素(CO2)排出量が少なく、電力や製鉄を中心に多くの需要を見込める。CO2削減の付加価値をさらに高めるべく、生産時のCCUS(CO2の回収・利用・貯留)推進や「カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)」の取り組みを急いでいる。(森下晃行)
2030年度までに2兆円規模を投資―。三菱商事は18日、温室効果ガス(GHG)の排出量削減に関する新たな目標を発表した。再生可能エネルギーや蓄電池の材料となる銅・レアメタルのほか、天然ガスを重点投資分野に掲げる。
三井物産が6月にインドネシアの石炭火力発電所の権益を売却すると発表、住友商事も8月に豪州における一般炭権益の売却を表明するなど、総合商社の間では石炭や火力発電の権益からの撤退が相次いでいる。一方、同じ化石燃料でも各社はLNGへの投資には力を入れている。再生可能エネの普及には長い時間がかかり、LNGが代替エネとして需要を見込まれているためだ。
三菱商事や三井物産は豪州や東南アジア、ロシアなどで天然ガス田の開発を手がける。三菱商事の垣内威彦社長は「安定供給に貢献する」と強調。三井物産の堀健一社長はLNGを、再生可能エネや水素、アンモニアに移行する際の「“トランジショナル・フューエル”(過渡期の燃料)だ」と位置付ける。
ただし、石炭などに比べ少ないとはいえ、LNGも生産や燃焼時にCO2を排出する。特に生産時の低・脱炭素化が課題だ。そこで三菱商事や三井物産、住友商事、双日などが開発・運営しているインドネシアの「タングーLNGプロジェクト」では、CCUSの導入を計画する。天然ガスの生産に伴い排出されるCO2を累計約2500万トン回収し、開発中のガス田に再圧入・貯留する。CO2の排出削減と天然ガスの増産を両立させる。
「カーボンニュートラルLNG」を取り扱う動きも活発化してきた。森林保全などの取り組みを通じ獲得したカーボンクレジットで生産時などの排出量を相殺し、実質ゼロにするもので、三井物産は3月に北海道ガスへカーボンニュートラルLNGを供給。三菱商事も子会社を通じ、東邦ガスや石油資源開発(JAPEX)にカーボンニュートラルLNGを販売した。
低・脱炭素化の取り組みは始まったばかりで、各社は需要家の動向を見据え事業を進める。足元ではLNG価格が世界的に高騰し、中長期的にも需要拡大が見込まれる中、商社には安定的な調達・供給が求められている。