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コロナ後の気候変動対策へ、9月開催「仮想COP」の注目点

小泉進次郎環境相は2日の閣議後会見で、“コロナショック後”の気候変動対策を国際社会が議論するオンライン会議を9月上旬に開くと発表した。日本が各国に参加を呼びかけ、景気対策において環境問題を置き去りにしないように認識を共有する。11月に予定されていた国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は2021年への延期が決まっており、国際交渉で日本が存在感を示す場ができた。(取材=編集委員・松木喬)

日本が提案

オンライン会議は気候変動枠組み条約の締結国が参加し、各国閣僚級がメッセージを発信する“仮想COP”を想定。9月上旬の開催までにサイトを開設し、各国が気候変動対策の情報も登録、発信する。

小泉環境相が4月の国際対話でオンライン会議を提案し、賛同を得ていた。日本時間1日夜の条約事務局主催の会議にも小泉環境相はビデオメッセージを送り、「できるだけ早く招待状を届けたい」とあいさつした。

コロナ後対策

日本の主導で開催するオンライン会議の主題が、コロナ後の気候変動対策だ。国際エネルギー機関(IEA)によると感染防止のために経済活動が停止した影響で、20年の二酸化炭素(CO2)排出量は前年比8%減が見込まれる。過去最大級の減少だが、景気回復だけを優先すると増加基調に戻りかねない。

そこで、コロナで傷ついた社会と経済をCO2排出ゼロの脱炭素型に復興させる「グリーンリカバリー(緑の回復)」を求める声が海外で広がっている。欧州連合(EU)加盟国やグローバル企業トップは4月中旬、経済対策で気候変動対策の重視を要求すると発表した。他にもEUの経済界で「緑の回復」待望論が起きている。

脱炭素へ移行

機運が醸成されつつある中、9月のオンライン会議での日本からの発信が注目される。小泉環境相は「20年度第1次補正予算で脱炭素への移行を明記した」と説明する。具体策としては電動バイクの導入や国内回帰した工場への太陽光パネルの設置支援を挙げる。会議の提案国として、発信でも世界を主導し、EUのように経済界の巻き込みも期待したい。

日刊工業新聞2020年6月3日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
小泉環境相主導で開催する会議は、リアルなCOPのような合意文書はつくらない予定です。また、リアルCOPのように、開会前から盛り上げないと世間からの注目度が低いかもしれません。それに環境省発表の名称「オンライン・プラットフォーム」だと、気候変動の会議なのか、わかりにくいです。欧州で立ち上がった「グリーン・リカバリー・アライアンス」の名称を参考にしても良いのでは。

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