電子部品は来年度に反動減、過剰在庫で経営計画策定は難航へ
電子部品の需要が調整局面に入りそうだ。自動車向けを中心に、実需を上回る出荷が続いてきた反動が2022年1―3月以降にも生じるとの見方が浮上。電子部品各社とも23年3月期の経営計画策定は難航しそうだ。
21年内は産業機械向けなどを中心に引き続き旺盛な需要が継続し、複数企業が22年3月期業績予想を上方修正する見通し。自動車向け電子部品では減産の影響を一部受けたが、大部分を占める汎用品への影響は少なかった模様だ。
また、巣ごもり需要の一巡でパソコン向け受注などが減速したが、産業機械や米アップルのスマートフォン新機種向けなどが押し上げた。特に産業機械向け需要は「工場の自動化投資の高まりで、予想以上に伸びている」(大和証券の佐渡拓実チーフアナリスト)。
だが22年4月以降、主要部品の積層セラミックコンデンサー(MLCC)を中心に変調が予想される。モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤昌司アナリストは「自動車分野の需要家がMLCCを多めに確保しようとしている影響が大きい」と指摘する。
佐藤氏の分析では村田製作所、TDK、太陽誘電の3社合計の自動車向けMLCC売上高(ドル換算)が、17年四半期平均値と比べて21年1―3月、同4―6月にいずれも約2・4倍に膨らんだ。世界の乗用車出荷台数は21年1―3月が同0・88倍、4―6月が同0・89倍にとどまるにもかかわらずだ。
コロナ禍によるサプライチェーン(供給網)リスクを回避するため、自動車メーカーの間で在庫水準を引き上げる動きが強まった。こうした状況が1年以上続いた結果、MLCCの在庫水準は一部で6カ月程度まで膨らみ「反動で調整が起きるリスクも高まっている」(佐藤氏)。
半導体・電子部品商社コアスタッフの戸沢正紀社長も「二重、三重発注が起きている可能性がある。21年度内は需要が落ち込む可能性は低いが、来年春以降は急速に状況が変わるかもしれない」との見方を示す。
村田製作所、太陽誘電ともにMLCCが連結営業利益の多くを稼ぎ出し、自動車向けは主力分野の一つ。自動車向けの失速は減益要因になりうる。
とはいえ、ガソリン車に比べてMLCC搭載数が約3倍とされる電気自動車(EV)比率が上昇していることや、高付加価値製品の販売が増えているのも事実。反動減により短期的に需要がピークアウトする公算は大きいが、脱炭素の潮流で中長期では需要拡大トレンドが続く見通しだ。