パワー半導体向けの高効率な放熱構造、東大が開発
東京大学大学院の塩見淳一郎教授らの研究グループは、高電圧・大電流を扱うパワー半導体向けの高効率な放熱構造を開発した。発熱体と加熱器の間に挟んで熱を拡散するヒートスプレッダーとして利用できる。比較的安価なグラファイトを用い、3次元的な熱流制御を行うことで実現した。高放熱効率と低コスト化を両立し、次世代パワー半導体の高集積化やコスト低減につながると期待される。
パワー半導体の出力上昇や機器の小型化に伴い、一般に使用されている銅より高熱伝導率のヒートスプレッダーが求められている。グラファイトの熱伝導率は面内方向には高いが、面直方向には低いため、等方的な放熱が必要なパワー半導体用には使えなかった。
研究グループは熱流制御によりグラファイトに等方的で高い熱伝導率を持たせる方法を考案した。まず数値解析法を用いてグラファイト材の3次元構造による熱流が放熱性能に与える影響を評価。その結果、高効率と考えられていた2次元面での放射状配置より3次元空間で配向の異なる二つのグラファイト材を重ねた構造が1・5倍以上高い放熱性能を持つことが分かった。
そこで配向の異なるグラファイト層を銅と一体焼成して接合し、3次元構造のヒートスプレッダーとして組み立てた。
これを用いてデバイスの放熱実験をした結果、熱伝導率が900ワット/メートル・ケルビンの等方性材料と同等の性能を示した。
既存の銅の熱伝導率は約400ワット/メートル・ケルビンにとどまる。
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日刊工業新聞2021年10月22日