パワー半導体3割増産。富士電機が世界市場の拡大を追い風に一手
富士電機は2021年度下期に青森県・津軽で電力制御用パワー半導体の8インチウエハーラインを立ち上げる。主要顧客の自動車メーカーが計画前倒しで電動化を進めるほか、世界的な再生可能エネルギー導入拡大も追い風となる。大口径化で増産対応とともにコスト削減につなげる。21年度末の8インチ生産能力全体は20年度末比で約3割拡大する見通し。
子会社の富士電機津軽セミコンダクタ(青森県五所川原市)が8インチウエハーラインでのパワー半導体生産を始める。クリーンルームにある既存の6インチラインの一部を整理し、新たに8インチラインを構築する。22年度下期まで段階的に製造設備を増強する。総投資額は数百億円とみられる。
同社は12年にルネサスエレクトロニクスから買い取った工場。取得後もルネサスにチップ供給を続けてきたが、21年度でその供給がほぼ終了。不要になる設備を片付けて空いたスペースを活用し、8インチライン導入に踏み切る。富士電機は松本工場(長野県松本市)と山梨工場(山梨県南アルプス市)に8インチラインを保有する。津軽が加わり、国内前工程3工場の8インチ生産能力は18年度末比で約3倍に拡大する。
当初は19―23年度の5年間でパワー半導体の増産に1200億円(前5カ年実績比約82%増)を投じる計画だったが、車載用中心の需要急増に伴って投資を1年前倒しして22年度までに実行することにした。23年度以降はまず津軽と松本の既存建屋での設備増強を進めつつ、次の施策を検討する。前工程だけでなく、組み立てなどの後工程も国内外で生産能力を順次増強する。
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日刊工業新聞2021年7月15日