障がい者が分身ロボットで接客、就労機会広げるきっかけに

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オリヒメがパイロットの分身となり、会話やジェスチャーで周囲とコミュニケーションをとる

東京都港区は、オリィ研究所(東京都中央区)のロボット「OriHime(オリヒメ)」を活用し、障がい者の就労を支援する実証実験を行っている。操縦者「パイロット」は、遠隔操作するオリヒメを分身にして、会話やジェスチャーで周囲とコミュニケーションをとれる。オリヒメは白を基調とした丸みを帯びた姿で高さ23センチメートルの卓上サイズ。港区役所の1階にある福祉売店「はなみずき」のカウンターから「いらっしゃいませ」と声をかける。(熊川京花)

「いるって聞いたから会いに来たよ」と女性がオリヒメに駆け寄った。「うれしいです。お元気でしたか」と片手を挙げて応えるオリヒメから聞こえるのは男性の声だ。

パイロットの永広柾人さんは、1歳の時に神経細胞の伝達不全により筋が萎縮する難病「脊髄性筋萎縮症」と診断された。自宅で横になりながら、指と顎のわずかな動きでパソコンを使ってオリヒメを操作し接客を行う。オリヒメの頭部に搭載されたカメラが永広さんの視界だ。現在は不定期で2―3週間、週4日の13―14時の1時間を基本に勤務する。

この実証実験は、就労を希望する障がい者の障がい特性に応じた働き方を支援する港区の2021年度の新規事業の一環だ。パイロットの意見を取り入れつつ、21年度内に複数回、不定期で実施する。パイロットからはオリヒメを活用した仕事にはどのようなものが適しているかや、働く上での課題を聞く。データとして蓄積し今後に生かす。

はなみずきには、区内の福祉団体による手作りのクッキーやせんべいなどのお菓子、キーホルダーなど小物類や洋服が並ぶ。「甘いものが食べたいのだけど、おすすめはありますか」と女性が問いかけると「そうですね、こちらはいかがでしょうか」とオリヒメが応じ、隣にあるタブレット端末が商品紹介の画面に切り替わった。ジェスチャーを交えたオリヒメの商品説明が続く。その姿を「かわいいと言ってくれる女性のお客さまが多くてうれしい」と永広さんは話す。

オリヒメは連携するタブレット端末も使って商品を紹介する

購入時は店舗の販売員がレジ作業を行う連携プレーで接客は進んだ。商品が売れた後に「売れてうれしいね」と気持ちを分かち合えるのも楽しいという。

オリヒメの操作について永広さんは「1回の研修で覚えられるくらい簡単だ。会話に夢中になるとたまにジェスチャーを忘れてしまうのが課題なくらい」と話す。現在のパイロットは永広さん1人だが、増員も予定している。オリヒメを介したパイロット同士の遠隔での研修も検討中だ。

坪井清徳港区障害者支援係長は「この実証実験の結果を踏まえて、22年度以降の事業として区や関連施設などで分身ロボットによる接客や案内といった仕事の拡大につなげたい」と、障がい者就労機会が広がるきっかけになることを期待する。

「オリヒメを通じ、仲間ができて人生が良い方向へ進んでいる。できることが増えてわくわくしている」と話す永広さんの声は弾んでいる。

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