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ワクチンが効くのも免疫のおかげ。体を守る仕組みを知ろう

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしい人体のしくみの本」

体内に入ってきた異物を攻撃する免疫

ヒトの体は、皮膚や粘膜、粘膜上の線毛運動などによって守られていて、体内に異物が入るのを防いでいます。しかしこれだけでは完璧な機能ではないので、ときには血管などの体内に異物が侵入してしまうことがあります。異物が入ると、ヒトの体はそれを排除して体の安全を維持しようとします。異物は害のない物質のこともありますが、ときには「病原菌」などが入り込むこともあります。このようなとき活躍するのが「免疫」です。例えば、子供の頃に麻疹(はしか)にかかると麻疹ウイルスに対して免疫ができ、次に体内に入ったときにすぐに撃退できるので発症を防げるのです。

 

広い意味で免疫を考えると、2種類のタイプがあります。相手を特定しないで攻撃する方式を「非特異的免疫」、特定の侵入者を確認して攻撃する方式を「特異的免疫」と呼びます。例えば、麻疹ウイルスを攻撃する免疫は特異的免疫なので天然痘のウイルスを攻撃することができません。特異的免疫では、それぞれに違う免疫が必要になるのです。

 

非特異的免疫を担当するのは、主に白血球の中の「好中球」や「マクロファージ」、リンパ球の中の「ナチュ ラルキラー細胞」です。リンパ球にはさまざまな種類があり、特異的免疫の役割を持つものもあります。

 

特異的免疫では、まず「抗原」である侵入者の特徴を確認して「抗体」を大量に作ります。例えば、外形を形作るタンパク質の配列などを認識するのです。効果が出るまでには1週間ほどの時間がかかり、この間に病気が進行する可能性があります。ですが一度抗体ができると、次に同じ抗原が侵入した際には迅速に抗体ができます。このような性質を利用したのが「ワクチン」です。病原体の構成成分と似ていて、その毒性をなくしたり、弱めたりした抗原を体内に注入して抗体とするのです。こうすると病原体が入った際に即座に攻撃することができるのです。

(「トコトンやさしい人体のしくみの本」p.98-99より一部抜粋)

<書籍紹介>
人の体は複雑で、すべてを理解するのは難しい。本書では、人体の機能やしくみについて、高校で学ぶ生物の知識がない人にもわかるように、トコトンやさしく解説する。

書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい人体のしくみの本
著者名:倉橋 隆
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
倉橋 隆(くらはし たかし)
1990年 筑波大学大学院 修了(理学博士)
1990年 生理学研究所 助手
1992年 ジョンズ・ホプキンス大学医学部 リサーチフェロー(上原財団)
1992年〜93年 モネル化学感覚研究所・所長招聘リサーチフェロー
1996年 大阪大学大学院 助教授
1999年〜現在 大阪大学大学院 教授
2010年〜現在 三重大学大学院 客員教授、リサーチアソシエイト

【受賞歴】
モエヘネシールイヴィトン(仏) ダビンチ賞
米化学感覚学会(AChemS) Takasago賞
【主な著書】
「嗅覚生理学」フレグランスジャーナル社、2004年
「トコトンやさしいにおいとかおりの本」(共著)日刊工業新聞社、2011年
「神経細胞の科学」(共著)日刊工業新聞社、2013年

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章  生命とは—ヒトの体は分子、細胞、組織でできている
ヒトの体を構成するもの[いろいろな臓器、器官、細胞、分子]
ヒトの体は主に炭素、酸素、水素で構成されている[分子から見た人体]
身体のしくみの数字のヒミツ[生体現象の対数と指数]
体の中の潤滑油[ビタミンや補酵素]

第2章 神経情報と液性情報—体の中の協調性をとる
脳と脊髄は感覚や指令の中心[脳と脊髄を合わせた中枢神経系]
哺乳類で発達している大脳皮質[運動や思考の機能を司る]
脳や脊髄から伸びる末梢神経系[感覚神経、運動神経、自律神経]
体をまとめる司令塔[内分泌腺やホルモンの種類]

第3章 酸素や栄養素の循環―生体の防御
呼吸のしくみ[助間筋と横隔膜]
肺で酸素を受け取って、各組織へ運ぶしくみ[赤血球の役割と機構]
体内に入ってきた異物を攻撃する免疫[非特異的免疫と特異的免疫]
体の中への特定の侵入者を攻撃する[特異的免疫]

第4章 栄養分を吸収してエネルギーに利用—消化と活動のメカニズム
食べ物が分解され吸収されるしくみ[消化酵素の働きで栄養分を吸収]
筋肉を機能や見た目や性質で分類する[横紋筋と平滑筋、速筋と遅筋]
2つのフィラメントが滑る分子構造[ミオシン頭部の動き]
骨のしくみと役割[血液を作り、栄養を貯蔵する]

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