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コロナワクチンでも注目、親子の遺伝で「mRNA」はどんな働きをする?

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしい人体のしくみの本」

なぜ親子は遺伝子によって似るのか

体の中のありとあらゆる場所で、各種のタンパク質は重要な働きをしています。ヒトの特定の一種のタンパク質を比較すると、個人が違ってもおおまかな機能やアミノ酸はほぼ同じです。ただし、そのアミノ酸の並びを詳細に比べると、個人によってわずかながら違いがあります。これがヒトの個性を作り出しているのです。
 外見、運動、体の働きもタンパク質によって違いが表れます。タンパク質が少し変われば、体の中で化学反応の起こり方も少しずつ変わるため、栄養の吸収や使い方なども変わってくるのです。

親から子へ、こういった形質を伝えるのが「遺伝子」です。遺伝子は「DNA(デオキシリボ核酸)」という物質で、何万もの各種タンパク質の並び方の設計図なのです。核内にパックされて収納されたDNAの情報から必要な部分だけが小さな断片のRNA(リボ核酸)として核の外へ出ます。特に遺伝子の情報を運ぶ小さなRNAは伝令RNA(メッセンジャーRNA、mRNA)と呼ばれます。その情報に照らし合わせながら、細胞内のリボソーム上でアミノ酸1つずつがつながってタンパク質になっていくのです。

細胞には両親からのDNAがペアで並んでいますが、卵細胞や精子を作るときにDNAの量が半分になります。一見、ペアになっているDNAは母方のものと父方のものがそのまま子に伝わると思われるかも知れません。しかし、卵細胞や精子を作るときに減数分裂の過程で母方由来のDNAと父方由来のDNAは混ざり合って子に受け継がれます。このためまったく新規のDNAができあがります。
 このように、DNAは個人個人を形作る設計図のようなものですから、1つずつしかありません。犯罪捜査などの個人特定にDNA解析が利用されるのはこのためです。

(「トコトンやさしい人体のしくみの本」p.36-37より一部抜粋)

<書籍紹介>
人の体は複雑で、すべてを理解するのは難しい。本書では、人体の機能やしくみについて、高校で学ぶ生物の知識がない人にもわかるように、トコトンやさしく解説する。

書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい人体のしくみの本
著者名:倉橋 隆
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
倉橋 隆(くらはし たかし)
1990年 筑波大学大学院 修了(理学博士)
1990年 生理学研究所 助手
1992年 ジョンズ・ホプキンス大学医学部 リサーチフェロー(上原財団)
1992年〜93年 モネル化学感覚研究所・所長招聘リサーチフェロー
1996年 大阪大学大学院 助教授
1999年〜現在 大阪大学大学院 教授
2010年〜現在 三重大学大学院 客員教授、リサーチアソシエイト

【受賞歴】
モエヘネシールイヴィトン(仏) ダビンチ賞
米化学感覚学会(AChemS) Takasago賞
【主な著書】
「嗅覚生理学」フレグランスジャーナル社、2004年
「トコトンやさしいにおいとかおりの本」(共著)日刊工業新聞社、2011年
「神経細胞の科学」(共著)日刊工業新聞社、2013年

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
第1章  生命とは—ヒトの体は分子、細胞、組織でできている
ヒトの体を構成するもの[いろいろな臓器、器官、細胞、分子]
ヒトの体は主に炭素、酸素、水素で構成されている[分子から見た人体]
身体のしくみの数字のヒミツ[生体現象の対数と指数]
体の中の潤滑油[ビタミンや補酵素]

第2章 神経情報と液性情報—体の中の協調性をとる
脳と脊髄は感覚や指令の中心[脳と脊髄を合わせた中枢神経系]
哺乳類で発達している大脳皮質[運動や思考の機能を司る]
脳や脊髄から伸びる末梢神経系[感覚神経、運動神経、自律神経]
体をまとめる司令塔[内分泌腺やホルモンの種類]

第3章 酸素や栄養素の循環―生体の防御
呼吸のしくみ[助間筋と横隔膜]
肺で酸素を受け取って、各組織へ運ぶしくみ[赤血球の役割と機構]
体内に入ってきた異物を攻撃する免疫[非特異的免疫と特異的免疫]
体の中への特定の侵入者を攻撃する[特異的免疫]

第4章 栄養分を吸収してエネルギーに利用—消化と活動のメカニズム
食べ物が分解され吸収されるしくみ[消化酵素の働きで栄養分を吸収]
筋肉を機能や見た目や性質で分類する[横紋筋と平滑筋、速筋と遅筋]
2つのフィラメントが滑る分子構造[ミオシン頭部の動き]
骨のしくみと役割[血液を作り、栄養を貯蔵する]

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