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市場が拡大しつづけるeラーニング。コロナ対応だけでない活用のポイントとは

コロナで変わる福利厚生 #4 eラーニング

コロナ禍により対面での研修や学習が難しくなったことでeラーニングの需要が拡大した。さらにテレワークの普及で生まれた時間を有効活用する福利厚生のメニューとしてもeラーニングを導入し、メニューを拡充する企業が増えている。(取材・昆梓紗)

学習者のデータ管理も

「コロナ禍では問い合わせが増加し、2020年3月からの問い合わせ件数は前年比約2倍になりました」。オンライン学習プラットホームサービス「Udemy」の中谷健太氏はこう話す。
 Udemy はもともとCtoCのサービスで、講師が自作したオンライン講座を1本ごとに販売。映像授業、テスト、ワークなどがセットになっており、講師に質問できる機能も持つ。グローバルで15.5万本のコンテンツを抱え、4000万人のユーザーが学習している。

実際の講座の一例
 日本では2015年にベネッセがサービス提供を開始し、2019年6月にビジネス向けのサービス「Udemy Business」を開始。評価の高いコンテンツから5500本を厳選し、学び放題のパッケージとして販売している。

Udemy Businessのみの機能として特徴的なのが、管理とカリキュラムの作成ができる点だ。従業員の学習進捗が把握できるほか、その学習データを外部システムと連携し、人事情報に反映することなどができる。また、導入企業がUdemyのコンテンツを組み合わせカリキュラムを作成したり、コンテンツを独自に作成することも可能。日本で400社以上が導入している。
 もともとUdemyはIT、テック系のカリキュラムが強く、これを求めるユーザーや企業が多かったが、コロナ禍以降は金融、コンサルティング、商社、エネルギー関連など、店舗運営の見直しを計り、DX導入が急がれる企業からの問い合わせが増加した。

Udemyで人気の講座例

学習の最適化

Udemyの個人学習者向け調査では、2020年3月と2021年3月を比較した時、社会人学習人口が1000万人から1100万人に増加し、そのうちeラーニング人口は400万人から530万人に増加したという。
 矢野経済研究所によると、2020年度の国内eラーニング市場規模は、前年度比22.4%増の2,880億5,000万円を見込む。内訳は、法人向け市場規模が845億5,000万円(前年度比23.6%増)、個人向け市場規模が2,035億円(同21.9%増)。21年度の国内eラーニング市場規模は、3,126億円(前年度比8.5%増)と予測。先行きの不透明感が続く中で、需要は維持されると見込まれている。

コロナ禍では対面での学習・研修が難しくなったことでeラーニングを導入する企業が増加したが、コロナ前より画一的・対面集合ベースの研修を見直したいというニーズは高まっていたと中谷氏は話す。「従来行われていた階層別の研修を一斉に行う、といったスタイルではなく、個々の状況やレベルに合わせ最適化した研修を行いたいという声が増えていました。eラーニングであればそれが簡単に可能になります」(中谷氏)。

産育休者への推奨講座をピックアップしサポート

育休中の学びに

さらに、他の福利厚生と組み合わせた活用事例も増えつつある。千葉銀行では産休・育休取得中の従業員に向け、Udemy Businessを取り入れたサポートを行っている。毎週決められた日時にオンラインサロンを開催し、その中で会社が推奨するカリキュラムから好きなものを受講してもらう時間と、参加者同志が育児の悩みなどを話し合う交流の時間を設けている。企業としては産育休取得者のスムーズな復職を促し、ダイバーシティを促進する狙いがある。「20年に開始した取組みですが受講者に好評で、今年も規模を拡大して実施中です」(中谷氏)。

しかし、eラーニングは学習者の自発性に依る部分が大きく、導入しても利用されない、利用が偏るといった難点がある。また、対面方式の研修で可能だった受講者同士の交流も起きにくい。ベネッセではシステムの提供とともに、活用方法や事例の共有などの施策の提案も行う。実際に社内で実施し効果を実証しているという。
 eラーニング導入効果を高めるためには、学習環境、学習機会の充実だけでなく、自律的に学習する文化の醸成が欠かせない。企業側も導入するだけでなく、千葉銀行の事例のように、社内制度やサポートを組み合わせた運用していく必要があるだろう。

昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
テレワークの増加で従業員が新たな情報に接する機会が減っている、という悩みを持つ企業が増えていると聞きました。eラーニングの活用は新たな知識を得ることにもつながります。

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コロナで変わる福利厚生
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コロナ禍で急加速したリモートワークなどに対し、「出社」や「リアルでの交流」をベースにした福利厚生の見直しを計る企業が増加している。社員が求める福利厚生の内容も、これまで多かった休暇・娯楽分野から、ヘルスケア・生活サポートへと転換しつつある。サービス提供企業と、導入企業の現状を取材する。

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