1台93.8%の部品リユース率!再生複合機に見るキヤノンの心意気
ライフサイクル全体で削減
キヤノンは、製品1台当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を毎年3%改善する目標を掲げている。設計から調達、開発、生産、物流、販売、リサイクルまで製品ライフサイクル全体で削減に取り組む。主力の複合機事業における環境の取り組みについて、楠元俊彦執行役員兼デジタルプリンティング事業本部副事業本部長に聞いた。
―目標達成に向け、複合機事業の進捗(しんちょく)は。
「全社で掲げる目標を、同事業でも達成している。『原材料』『生産』『使用』『物流』とステージごとでCO2の排出量を算出し、改善に取り組んでいる。複合機の特徴上、CO2排出量は『使用』フェーズが全体の半分を占める。このため、複合機使用時に発生する熱の温度を下げたり、部品寿命を伸ばして部品の交換頻度を減らすなど、『使用』時のCO2削減を徹底して進めてきた」
―CO2削減に関する今後の取り組みは。
「『使用』に加え、『原材料』のステージにも力を入れていく。従来は複合機の各機種で異なる骨格を使用していたが、複合機の基本の骨格を共通化する。本体の小型・軽量化や部材の共通化やレス化につながる」
―日本環境協会が主催するエコマークアワード2020で、キヤノンの再生複合機がエコ・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
「受賞した『イメージランナー・アドバンスC3330F―RG』は、1台当たり93・8%の部品リユース率(質量比)を達成した。これだけ高い数字は今までなかっただろう。元々リユースすることを想定して新しい複合機の開発に取り組んだほか、複合機の各部品の寿命を確認できるデータベースを構築したことなどが寄与した」
―今後の再生複合機事業の方向性は。
「学校や自治体で導入が進んでいるが、再生複合機のボリュームはまだ多くない。まずは、循環型のサイクルを広げていく必要がある。部品・材料全てを有効利用できるような仕組みを作ることが大切になる」
―使用済み複合機の回収面で課題は。
「帰ってこないものはある。国内では、複合機業界共同で、回収した複合機を取り置くセンター(拠点)があるため、顧客先の複合機を他社または自社のものに置き換える際の回収も円滑に進められる。ただ、そうしたセンターは全世界にあるわけではなく、第三者に持って行かれてしまう場合がある」
記者の目/さらなる挑戦に期待
楠元俊彦執行役員は長年複合機の開発・生産畑を歩んできた。メーカーとして「開発・設計のCO2削減徹底」にこだわる姿勢が印象的だった。そもそも紙を電子化することで環境貢献につなげることも可能だが、印刷需要が完全になくなることはない。複合機の環境負荷低減に向けたさらなる挑戦に期待したい。(張谷京子)