携帯大手がスマホ買い替え需要喚起に腐心。勝者は誰か
携帯通信大手各社がスマートフォンの買い替え需要の喚起に腐心している。NTTドコモは、消費者が分割払いで購入したスマホを返却することで残価額の支払いが不要になる枠組みを24日に導入。KDDIも残価設定型の端末購入プランの条件を見直した。両社とも米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の最新機種を24日に発売することを念頭に置いており、端末販売の加速につなげられるか試される。(編集委員・斎藤弘和)
「iPhoneの購入者は、(最新機種が登場する周期の)1年で替えるニーズもある。今回、(分割払いが終了するタイミングよりも)早く購入したい人にも利点がある設計にした」―。ドコモの山本明宏営業戦略部営業戦略担当部長は、「いつでもカエドキプログラム」を24日に始める背景をこう説明する。
同プログラムは、消費者が残価設定型の24回分割払いで購入した機種をドコモに返却すると、返却タイミングに応じて特典を受けられる仕組みだ。例えば23カ月目に対象端末を返す場合、24回目に設定された残価額の支払いが不要になる。1―22カ月目に返却する場合、23回目までの分割支払金に関しても、ドコモがあらかじめ定めた額を毎月割り引く。
従来、ドコモが展開してきた「スマホおかえしプログラム」は、36回分割払いで購入したスマホを返却することが条件で、支払いが不要になる分割支払金も最大12回分だった。早期にスマホを買い替えたい人にとっては、いつでもカエドキプログラムの方が、利点が大きいと言える。
一方、KDDIは17日に「スマホトクするプログラム」を始めた。24回払いを条件に、購入機種の2年後の買い取り価格を残価として設定。本体価格から残価分を除くことで、23回目の支払いまでは安い割賦金額となる。従来も類似の仕組みを展開していたが、新機種への買い替えを求めていた。新プログラムでは、買い替えの条件を撤廃した。
公正取引委員会は、こうした買い替え条件を設けるKDDIとソフトバンクについて「消費者に契約変更を断念させ、選択権を事実上奪う」恐れがあるとして問題視してきた。KDDIは、iPhoneの最新機種発売を前に、この懸念の解消を図った格好だ。
携帯通信各社はコロナ禍で2021年3月期の端末販売が伸び悩んだ。22年3月期は巻き返しを見込むものの、高機能なスマホの普及が一巡した現在、全体的に買い替え周期は長くなっているとの指摘もある。消費者を過度に囲い込む行為は慎みつつ、新機種の購入をどれだけ後押しできるかが問われる。