「コンピューターを盲信しないように」。知能ロボット専門の教授が大切にする学び
大学生、伝えること学ぶ
福岡工業大学情報工学部情報システム工学科の木室義彦教授の研究室では、学生が小学生にロボットをプログラミングで動かすことを教えている。木室教授は知能ロボットが専門で、ロボットの周辺環境にさまざまなセンサーを設置し、ロボットの動きに役立てることを提案している。ロボットに関する教育は、学生が学ぶことも多いとして力を入れる。(西部・関広樹)
木室教授は「ロボットを含めコンピューターとは『こういうことができて、できないこともある』と教えることが必要」と話す。
プログラミングを教える手段にはゲームもあるが、対象物が動く方が分かりやすいと考えロボットにした。「ゲームで壁にぶつかることはあってもそう見えるだけ。実際にぶつかるとなると、そうならないためにどうすればいいか真剣になる」と説明する。
木室教授は以前、盲学校の中高生にロボットのプログラミングを教えた経験もある。その際は2輪駆動のロボットを使用。生徒らはロボットを触り、走行時の音などで動きを実感した。
小学生に対して教える内容は、基本的には中高生向けと同じだ。ただ、角度の概念など年次によって習っていない言葉や事柄もあり、配慮や工夫が求められている。現場で相談しながら進めて、反応を見つつ改善を重ねる。そんな場合でも「難しくても動きを見せると理解が進む」のがロボットの強みだとする。
強調して教えるのはロボットがプログラムで動くこと。電話同様のキーパッドの数字で前後左右の動きや動作時間を入力して実行させる。子どもが飽きないように、できるだけ早く動かせる仕様にすることがポイントの一つ。2019年には飛行ロボット(ドローン)を導入した。
「コンピューターを妄信しないような経験をさせたい」とする。人間が誤ったプログラムを入れれば、間違い通り動くことを実感してもらう。間違うこと自体や、他の数字を入れてみようと数字を変えることは歓迎する。思った通りに動かないことを、なぜだろうと考えることを重視する。「想定外のことをしてくれるほうが盛り上がる」とする。
小学生に教えることを通じて大学生が学ぶことは多い。プログラム作成のためのプログラムは学生が作る。それは先輩から受け継いだもの。子どもたちと一緒に使っていると足りない部分が分かる。プログラムのコードを解析して課題に対処したり、新しい機能を加えたりする。
小学生との交流は学生が社会に出てからのコミュニケーションに通じることがある。木室教授は「小学生に分かるように伝えてみて、それで伝わらないのは、学生自身が知識があってもよく理解していないということ」と指摘する。こうしたことは、コミュニケーションをとってみて初めて分かるという。
学生が社会の中で、専門家ではない上司や関係者に自分の言いたいことを伝えられるか。その技能を鍛える場にもなっている。