三菱重工グループが進める水素貯蔵プロジェクト。石油メジャーが参画する事情
三菱重工業グループなどが米国で進める水素貯蔵プロジェクトに石油メジャーの米シェブロンが参画する見通しになった。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向け、シェブロンは水素を重点分野に位置付けており、インフラ整備に向け業界を超えて連携する。
三菱パワーの米国法人が、岩塩空洞の開発・運営会社である米マグナムデベロップメントと運営する先進的クリーンエネルギー貯蔵事業の合弁会社にシェブロンが出資する方向だ。マグナムが米ユタ州で運営する岩塩坑に、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー由来の水素などを貯蔵する施設を整備し、地域の発電に利用する計画。
三菱パワーは水素を燃料に使う発電設備も同州で受注済み。大型ガスタービンの燃料転換に必要な技術開発を強化している。同社とマグナムは世界最大級となる100万キロワット級エネルギー貯蔵施設の開発を目指している。
三菱重工は環境負荷の低いエネルギーへの転換を成長戦略に位置付ける。水素の製造から貯蔵、輸送、利用に至るエコシステムを外部と連携しながら構築する。10月をめどに三菱パワーを三菱重工に統合し、総合エナジーカンパニーとしての体制を強化する。
一方、シェブロンは脱炭素への対応が課題だ。水素などの次世代エネルギーの事業化を狙う部門を設け、温室効果ガスの排出抑制が難しい産業における水素需要を取り込む戦略を進めている。
日刊工業新聞2021年9月16