水はたんぱく質の立体構造を不安定化する、岡山大・立命館大が従来仮説を覆す
岡山大学の墨智成准教授と立命館大学の今村比呂志助教は、たんぱく質の変性メカニズムを解明し、水がたんぱく質の立体構造を不安定化することを明らかにした。水による効果で安定化するとした従来の仮説を覆した。独自に開発した理論計算により、たんぱく質分子内に働く直接相互作用によって安定化することが分かった。バイオ医薬品開発や人工たんぱく質の分子設計の新しい指針となる。
たんぱく質は天然の立体構造が崩れる変性が起こると、本来の機能が失われてしまう。そのため、バイオ医薬品などでは効果の維持や保存のために、変性させず安定化することが重要となる。
こうした変性について、たんぱく質を構成する疎水基が水との接触を避けるように立体構造を安定化するとした「疎水性相互作用仮説」が約60年前から広く信じられてきた。
今回、液体の密度汎(はん)関数理論を用いて水を介した間接的相互作用の寄与などを計算し、この仮説を検証した。その結果、仮説とは逆に、水はたんぱく質の天然構造を不安定化していることが分かった。水を介した間接的相互作用は、たんぱく質の変性構造に対して有利に働いていた。
さらに、こうした水による不安定化に対し、たんぱく質分子内に働くファンデルワースル力などの直接相互作用が打ち勝ち、天然構造の安定化を導くことが示された。
日刊工業新聞2021年9月10日