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「場所」「年功」「組織」の制約から脱却。三井住友海上火災保険の新人事制度の中身

三井住友海上火災保険が持続的に成長できるイノベーション企業への転換を進めている。その根幹である人財戦略では「自律」と「多様性」を重要なファクターに位置付ける。成長を阻害する場所、年功、組織という“三つの制約”からの脱却を試み、イノベーションを加速させる人事制度改定に取り組んでいる。

「人財がトランスフォームしなければ新しいビジネスを実行できない」。井口直紀執行役員人事部長はこう語る。激甚化する自然災害や日進月歩で進化するデジタル技術など、事業環境が大きく様相を変えるなか、新常態に柔軟に対応するには組織と個の力の強化が必須と考える。

自律や脱組織の視点では4月に副業・兼業を解禁した。同社の業務に貢献できる領域について、自治体やスタートアップの業務を経験できる。リテール営業部門の若手社員数人が不妊治療で悩む人向けの情報サイトを起業することを承認した。自律の養成には特効薬のような便利な処方箋はない。そこで新しい価値観に触れる機会を会社として提供することを重視する。

自律を促すため評価制度も工夫を凝らす。2020年に導入した組織評価制度「未来ソリューション・プログラム」は国連の持続可能な開発目標(SDGs)に資する取り組みを評価する。目の前の営業数字を達成する営業第一主義だけではエンゲージメントも高まりづらい。中長期的視点で付加価値を生む組織を評価し、挑戦を後押しする。

多様性や脱年功関連では22年4月からジョブ型に相当する「専門社員」を新設、複線型の人事制度に変える。データサイエンスやIT、資産運用など高度な専門領域を担う社員を対象に初年度は40人程度を選抜する。能力次第では20代のプロパー社員やキャリア人材の登用も検討する。

井口執行役員は「社内での栄達がゴールでない欧米的な社会がいずれ訪れる」として、今後も社会の潮目を見極めながら柔軟な人事制度改定を実行する。

日刊工業新聞2021年8月31日

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