ニュースイッチ

“損保大再編”の嚆矢、三井海上と住友海上の合併。歴史的統合を振り返る

“損保大再編”の嚆矢、三井海上と住友海上の合併。歴史的統合を振り返る

三井住友海上のオープニングセレモニー(01年10月1日)

強み生かし成果を最大化

バブル崩壊後、金融市場は自由化が進み、経営環境は急速に変化した。こうした中、損保業界は生き残りをかけた再編の時代に突入した。“損保大再編”の嚆矢(こうし)となったのが、当時業界3位を争っていた三井海上と住友海上の合併だ。三井と住友、日本を代表する財閥グループに属するライバル同士の合併は多くの関係者に衝撃を与えた。

自由化が進行

「青天の霹靂(へきれき)だった」。三井住友海上火災保険執行役員経営企画部長の若園浩史は、若手時代に起きた合併劇を振り返る。大再編の背景には、1995年以降に進んだ規制緩和が関係する。保険業法の改正などで、外資系企業の参入や保険料率の自由化が進行。マイカーブームの恩恵を受けた自動車保険の契約増も一巡し、損害保険市場が成熟を迎える中、損保各社は厳しい競争環境にさらされた。

若園は「成熟市場のパイを奪い合う構図となり、無理な競争環境に陥ったことで収益性が低下した」と90年代後半の経営環境を分析する。当時、損保の競争力を左右するのは、強力な商品開発と代理店ネットワークの拡充と考えられていた。経費削減努力も限界に近づく中、ライバルの両社は手を取り合うことで資本余力を見いだし、業界最上位の企業を目指すことを決めた。

実際、統合効果は大きく、04年には英保険大手アビバのアジア事業を約500億円で買収。これが海外ローカルビジネスへの本格参入につながり、今では東南アジア諸国連合(ASEAN)域内総収入保険料第1位の存在になるまで成長している。

社会に貢献

“歴史的統合”を経て、10年には持ち株会社MS&ADホールディングスが発足。中核会社のあいおいニッセイ同和損害保険とは、互いの強みを生かしながら成果を最大化する「機能別再編」に挑戦。両社は競合対比で高い増収率を記録するなど好調に歩んでいる。

若園は10月に発足20年を迎えるにあたり「保険会社の永遠の宿命は引き受け余力をしっかり高めること。次の20年も挑戦を繰り返し、社会に貢献できる会社であり続ける」と話す。(敬称略)

日刊工業新聞2020年2月25日

編集部のおすすめ