見た目の白さと強度を両立する歯科向け複合材料の正体
山形大学の嶋田隆一朗大学院生と増原陽人教授らは、白く高強度の性質を持つ歯科向け複合材料を開発した。セルロースナノ結晶(CNC)とハイドロキシアパタイト、多糖類のキトサンの複合材料で成人の咀嚼(そしゃく)力を上回る強度を確認した。見た目と強度、生体親和性を両立する歯科材料になる可能性がある。
ハイドロキシアパタイトは再石灰化の特徴を持つが、咀嚼する力で壊れるためCNCで強度を補った。CNCの表面をリン酸エステル化し、これを基点にCNCをハイドロキシアパタイトで被覆した。CNCとハイドロキシアパタイトは親水性があるため、溶け出す恐れがある。そこで多糖類のキトサンと複合化して疎水化した。
圧縮成形した複合材は、成人の平均的な咀嚼力を超える500ニュートンの力を加えても亀裂が入らなかった。歯の修復材に用いるとハイドロキシアパタイトは再石灰化し、CNCとキトサンは分解される。最終的にはハイドロキシアパタイトが残るという。
この再石灰化や分解の速度を調整し施術性と安定性を両立させる。現在は材料ができた段階であるため、歯学研究者などと実用性評価を進める。
歯科修復材料の中で金属製は見た目が不自然で、樹脂製は強度に課題があった。新材料は見た目の白さと強度を両立する材料になる可能性がある。
詳細は高分子学会が9月6―8日にオンラインで開く「第70回高分子討論会」で発表する。
日刊工業新聞2021年8月31日