旭化成が着手、「水素活用の化学品生産システム」構築の道筋
旭化成は水素社会の到来をにらみ、再生可能エネルギー由来の電力を用いた大規模水素製造と水素を活用した化学品生産システム構築に着手した。2025年までに100メガワット級の水電解システムの詳細設計を完了させる。世界の大規模水素製造計画において、100メガワット単位のシステム供給が求められるためだ。日揮ホールディングス(HD)との水素からアンモニア製造まで一貫した共同実証プロジェクトを通じ、実用化を目指す。(梶原洵子)
2段階で開始
実証プロジェクトは2段階で進める。まず福島県浪江町の水素製造設備「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」で稼働中の10メガワット級アルカリ水電解システムで製造した水素を用いて、24年からアンモニア製造を開始。次に10メガワット級スタックを連結した40メガワット級システムを構築し、27年に稼働させる。40メガワットでマルチスタック技術を検証し、100メガワット級システムにつなげる。
同プロジェクトは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援事業に採択された。
市場創出挑戦
旭化成グリーンソリューションプロジェクト事業開発グループの平野稔幸課長は、「水素社会は水素を作るだけでは実現できない。今回は市場創出も含めた挑戦となる」と同プロジェクトの意義を説明する。アンモニアは水素の用途として期待されており、この製造技術開発に取り組む日揮HDと手を組んだ。21年度中には、アンモニアの輸送と需要家探索を担う三菱商事と、火力発電にアンモニアを用いる需要家のJERAが参画する。
また、アンモニア製造を皮切りに、再生可能エネ由来の水素で環境負荷の低い“グリーンケミカル”を製造する道筋を付けることで、「化学業界の脱炭素につなげたい」(平野課長)と語る。
総合バランス
2段階目で技術開発する100メガワット級システムは、スタック連結だけでなく、中身も進化させる。独ティッセンクルップや独シーメンスといった世界の競合に対し、膜や電極などの部材開発から性能を向上できるのは旭化成だけ。「高い信頼性やコスト、耐久性、性能の総合的なバランスを追求する。(電解の)効率も高めたい」と平野課長は話す。
海外では数百メガワットからギガワット級の水素製造プロジェクトが検討されており、構成単位となる100メガワット級技術を完成させることは、世界で戦うパスポートとなる。巨大な水素市場、およびグリーンケミカル市場での成長を目指す。