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半導体製造装置の開発を手がける中小企業、ロボットと人の共存への道筋

半導体製造装置の開発を手がける中小企業、ロボットと人の共存への道筋

ネジ締め作業で活用している双腕型ロボット

人との分担、見極め効率化

フジセン技工(群馬県太田市、木下不二夫会長)は、自社工場でのロボット活用を積極化している。ネジ締め作業を自動化し、時間の短縮や品質向上といった成果につなげている。省人化を目的とするツールとして活用するだけでなく、ロボットと人との共存・共生を図ることを意識する。作業者がより付加価値の高い業務に専念できる仕組みを構築し、生産現場全体の効率を高めようとしている。(群馬支局長・古谷一樹)

半導体製造装置の開発・設計や機械部品加工などを手がけるフジセン技工が、生産現場でのロボット導入を検討し始めたのは約1年半前。「中小企業が人材を確保するのは非常に難しくなっている。一方で、作業者にもっと付加価値の高い仕事に従事してもらう方策を探っていた」。出雲基之生産本部長はロボット活用の狙いをこう振り返る。

ロボット活用でまず着目したのが、組み立て工程の多くを占めるネジ締め作業だ。門外漢にはシンプルな作業に見えるネジ締めだが、「道具の管理や締め方の違いなどによって品質に差が生じる」(出雲生産本部長)と指摘するように、実は作業者のスキルや経験、勘などが必要とされる。ロボット導入によってさまざまな利点が見込めると判断した。

検討開始から約1年後には、双腕型水平多関節(スカラ)ロボットを導入。それまで手作業で行っていたネジ締め作業の自動化を実現した。人手に比べて作業時間を約半分に短縮できたほか、品質のバラつき低減につながった。

ロボット導入の狙いは、作業の効率化にとどまらない。これまでネジ締め作業に従事してきた従業員を「より付加価値の高い業務に振り向ける」(同)ことにより、そのままの人員で現場全体の生産性を高める効果を引き出そうとしている。

ネジ締め作業の自動化の効果を実際に確認できたことから、今後はロボット活用の範囲をさらに拡大していく。すでにロボットを計4台に増やしており、例えば、現在は人手に頼っているネジ締め後の検査作業などについても「ロボットに置き換えていく」(坂村秀樹技術部生産技術課技師長)。

さまざまな作業への活用を見据えてロボットの数を増やしている

社内におけるこうしたロボットの運用実績を踏まえ、今期中にもロボットの販売事業に乗り出すことを検討中だ。少子高齢化などを背景にさまざまな業界が人材の確保に苦慮しており、ロボットの導入機運が高まっていることに対応する。

販売対象として想定しているのは、作業者の高齢化や、若手従業員の定着率が低いといった課題を抱える中堅・中小企業。特定の工程を自動化できるロボットシステムとして販売する計画で、コスト面の負担を軽減するためレンタル方式での供給も検討する。

ロボットに任せられる作業と人にしかできない作業を見極め、互いに補完しながら全体の生産性向上を目指す。ロボット活用をテコに新たなビジネスモデルの創出を図ろうとしている。

日刊工業新聞2021年8月26日

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